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自由落下から斜方投射につながるモデル

1 はじめに

 放物運動は、物体の慣性による等速直線運動と、重力による等加速度直線運動(自由落下)のベクトル和として与えられる。このモデル(装置)は、自由落下している小球の0.05秒ごとの位置から,水平投射,そして斜方投射を一連の流れの中で確認するものである。

2 斜方投射の式

 教科書で与えられる斜方投射の式は、物体の慣性による等速直線運動と、重力による等加速度直線運動(自由落下)のベクトル和を成分表示したものである。ベクトルの形で表せば以下のようになる。




3 モデル(装置)の製作方法

(1) 1cm×2cm×100cm 程度の木材を水平に置き、1cm側にL字金具を端から5cmの等間隔に取り付ける。(図1)

(2) 硬質塩化ビニル板(厚さ0.5mm)のような、薄く曲がりにくく加工しやすい板を用意する。色は黄色あたりが望ましい。この板を幅1cmで3.2cm,6.9cm,13.0cm,21.6cm,32.6cm,46.1cm,62.0cm,80.4cm,101.2cmの長さに切り出す。短い場合はつなぐ。

(3) 切り出した細長い板の一端から5mmのところに、L字金具に通るくらいの穴を空ける。他端に直径3cmの発砲スチロール球を半分に切ったものを、球の端と板の端がちょうど合うように張り合わせる。(図2) 以降、この半球付きの板を「うで」と呼ぶ。

(4) L字金具を付けた棒の一端に、(3)の半球を付ける。

(5) 棒を黒板に固定できるように、吸盤を取り付けたり、磁石を付けたり工夫する。

(図1) (図2)

4 使用(演示)方法

(1) 半球が見えるように「うで」を重ね、棒に付けた半球のすぐ横の金具につるす。このときの半球が、自由落下している小球の t = 0.05,0.1,0.15,0.2,0.25,0.3,0.35,0.4,0.45 [s]の位置を表す。(図3) 教科書などについている自由落下のストロボ写真と比べるとよい。

(2) 棒を水平に固定し、うでを等間隔につるす。このとき、半球は水平投射の軌跡となっている。うでを5cm間隔でつるしたときは初速度が1m/s、10cm間隔でつるしたときは初速度が2m/sに該当する。(図4は10cm間隔))

(3) 棒を傾けるだけで、半球が放物運動の軌跡となる。(図5,図6)このとき、棒は物体の慣性による等速直線運動(速さは初速度の大きさ)を、うでが重力による物体の落下を表している。放物線にするとうでの間隔が狭くなるので、10cm間隔でつるした方がよい。

(図3) (図4)


(図5) (図6)


5 補足

 このモデル(装置)は初学者より、一度放物運動について学んだ者が用いるとよいようだ。また、入試問題等でのベクトル的解法の一助として、説明の中で用いることもできる。



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