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表計算ソフトを利用したシミュレーション4
〜 復元力1(単振動) 〜
1 はじめに
原点を中心とした復元力がはたらくとき,運動方程式は次のように表せる。
ただし, は物体の質量, は復元力の定数( >0 )とする。 この微分方程式を解くと,変位 を時間 の関数として表すことができる。ただし, とする。
本研究では,(1)式をもとにしたシミュレーションを行うことで,微分方程式を解かずに,(2)式のような変位と時間の関係が得られることを示したい。ただし,本内容は「表計算ソフトを利用したシミュレーション1〜モンキーハンティング〜」を学習していることを前提とする。 |
2 目的
差分法を用いて,復元力を受けた物体の運動をシミュレーションする。 |
3 原理
時刻 での加速度を ,変位を とすると,(1)式は以下のように変形できる。
時刻 での速度 が,微小時間 の間に一定の加速度 で変化すると近似すると, 後の速度 は
と表せる。 同様に,時刻 での変位 が, の間に一定の速度 で変位すると近似すると, 後の変位 は
と表せる。 ここで,経過時間を微小時間 ごとに区切り, 番目の時刻 に対応する物理量を下の表1のように表す。
表1 時刻 に対応する物理量 このとき,(3)〜(5)式より, 番目の各項は次のような漸化式で示せる。
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4 方法
(6)〜(9)式をもとに,表計算ソフトのセルに数式を入力する。表2は入力の一例である。ただし,2行目と5行目の淡黄色のセルは初期設定値の入力欄で,セルの数値を変更することで運動の条件を変更できる。
表2 表計算ソフトへの入力例 |
5 結果
表2のように入力して,6行目を下方のセルにコピーしていくと,下の表3のような結果を得ることができる。
表3 表計算結果 表3の結果を用いて,時間と変位,速度,加速度の関係をグラフに示すと次のようになる。
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6 考察
表3や図1から復元力がはたらくとき物体は単振動することが分かる。また,各図から変位,速度,加速度の変化の周期が等しく,そのとき,変位と速度はπ/2,変位と加速度はπだけ位相がずれることも分かる。理論式(2)から得られる上記入力例での振動の周期は1.99秒,振幅1.0m,最大速度3.16m/s,最大加速度10m/s2であるので,表計算の結果は現象をよく再現している。 物体に復元力がはたらくとき,振動の中心付近では速度が最大になる一方で加速度の変化が極微小である。差分法で計算する場合,中心付近で各物理量に若干の誤差が発生する。計算時間間隔を小さくすることで精度を高めることができる。 |
7 指導上の留意点
本教材は、高等学校学習指導要領の「第2章 各学科に共通する各教科」における ・第4節 数学 第6 数学活用 (2) 社会生活における数理的な考察 ウ データの分析 ・第5節 理科 第3 物理 (1) 様々な運動 ウ 円運動と単振動 ・第5節 理科 第10 理科課題研究 ・第10節 情報 第2 情報の科学 (2) 問題解決とコンピュータの活用 ウ モデル化とシミュレーション という項目で利用できる。
本研究で紹介した表計算のサンプルファイルと,本内容を応用して作成した弾性力のシミュレーションソフト(下図)も用意した。下記リンク「simulation04.zip(88.0KB)」より取得できる。なお,回転運動を含んだ減衰振動までシミュレーションできるソフトになっているので,単振動をさせるには初期設定を以下の例のように変更する必要がある。
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