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表計算ソフトを利用したシミュレーション6
〜 万有引力 〜
1 はじめに
物体に万有引力がはたらくときの運動方程式は次のように表せる。
ただし, は原点とする物体の質量, は原点まわりで運動する物体の質量, は万有引力定数とする。 この微分方程式を極座標系で解くと,次のように 平面で運動する物体の軌道を求めることができる。
ただし, は離心率で,長軸半径 ,短軸半径 を用いて
と表される。(2)式は のとき楕円軌道を描く。 は,
と表される。 本研究では,(1)式をもとにしたシミュレーションを行うことで,万有引力を受けた物体の軌道を直交座標系で求め,それにより,ケプラーの法則を示したい。ただし,本内容は「表計算ソフトを利用したシミュレーション1〜モンキーハンティング〜」を学習していることを前提とする。 |
2 目的
差分法を用いて,万有引力を受けた物体の運動の軌道をシミュレーションする。 |
3 原理
時刻 での加速度を ,変位を とすると,(1)式は次のように書き直すことができる。
直行座標系での の座標を ( , ) とするとき,加速度の 成分 成分はそれぞれ
となる。
時刻
での速度の
成分を
とおく。これが,微小時間
の間に一定の加速度
で変化するものと近似すると,
後の速度
は
と表せる。
同様に,時刻
での変位
が,
の間に一定の速度
で変化するものと近似すると,
後の変位
は
と表せる。
成分についても同様に表すことができる。
ここで,経過時間を微小時間
ごとに区切り,
番目の時刻
に対応する物理量を下の表1のように表す。
表1 時刻 に対応する物理量 このとき(3)式より, 番目の変位の大きさと加速度の大きさは,次のような漸化式で示せる。
また,(4),(6),(7)式より, 番目の 成分の各項は次のような漸化式で示せる。
同様に 番目の 成分の各項は次のような漸化式で示せる。
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4 方法
(8)〜(16)式をもとに,表計算ソフトのセルに数式を入力する。表2は入力の一例である。ただし,2行目と5行目の淡黄色のセルは初期設定値の入力欄で,セルの数値を変更することで運動の条件を変更できる。下表の初期設定欄には,原点を太陽としたときの遠日点での地球の変位と速度を入力している。
表2 表計算ソフトへの入力例 |
5 結果
表2のように入力して,6行目を下方のセルにコピーしていくと,下の表3のような結果を得ることができる。
表3 計算結果 表3の結果を用いて,地球の公転軌道をグラフに示すと次のようになる。
地球の公転軌道はほぼ円軌道であるため,図1からは楕円軌道の様子が分からない。そこで,明確な楕円軌道を描くように表3の初速度を変更(例えば37000m/sに)して,改めてシミュレーションすると次のような結果になった。
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6 考察
図2から万有引力下で物体は楕円軌道を描くことが分かる。これはケプラーの第1法則に相当する。また,表計算結果から各点における変位と速度の外積を求めると,ほぼ一定(面積速度一定)である。これは,ケプラーの第2法則を示している。また,公転運動する物体の初期座標と初期速度を変更して得られる楕円運動の周期と半長軸の関係を調べると,周期の2乗が半長軸の3乗に比例することも分かる。これはケプラーの第3法則を示している。本シミュレーションの結果を用いてケプラーの法則について定量的に学習できる。 取り扱う現象のスケールが大きいため,本研究では計算時間間隔を1000秒〜3600秒程度でシミュレーションした。各値が理論値より微増していくものの,現実的な現象をほぼ再現することができた。 |
7 指導上の留意点
本教材は、高等学校学習指導要領の「第2章 各学科に共通する各教科」における ・第4節 数学 第6 数学活用 (2) 社会生活における数理的な考察 ウ データの分析 ・第5節 理科 第3 物理 (1) 様々な運動 エ 万有引力 ・第5節 理科 第9 地学 (4) 宇宙の構造 ア 太陽系 ・第5節 理科 第10 理科課題研究 ・第10節 情報 第2 情報の科学 (2) 問題解決とコンピュータの活用 ウ モデル化とシミュレーション という項目で利用できる。 本研究で紹介した表計算のサンプルファイルを用意した。下記リンク「simulation06.zip(10.0KB)」より取得できる。 |
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