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表計算ソフトを利用したシミュレーション7〜定在波(定常波)〜

1 はじめに

 表計算ソフトを用いて定在波のシミュレーションを行うファイルを作成し、さまざまな波をつくって観察する。


2 原理

 単振動をする波源から、x軸正の向きに伝わる正弦波(初期位相φ1)は次式で表される。

 ただし、Aは振幅、Tは周期、λは波長である。
また、x軸負の向きに伝わる正弦波(初期位相φ2)は次式で表される。

 反対の向きに同じ速さで進む、波長・振幅の等しい正弦波が重なると定在波(定常波)が生じる。
 これらの式をもとに、定在波(定常波)ができる様子をシミュレーションする。ただし、簡単のため初期位相はφ1=φ2=0 とする。


3 方法

表1に表計算ソフトへの入力の一例を示す。(※詳しい作成方法は「作成マニュアル」を参照)

〔作成方法(概要)〕

(1)1行目〜6行目に、「時刻 t」、「振幅 A」、「周期 T」、「波長λ」等のパラメータ(正弦波の性質を特徴づける数値)を入力する。
   黄色のセルの値は初期値であり、後で自由に変更することができる。

(2)9行目〜209行目に上記@、A式をもとに数式を入力する。9行目に数式を入力後、下方へドラッグしオートフィル機能を利用する。

(3)8行目〜209行目を範囲選択し、グラフを作成する。図1に一例を示す。

(4)時刻 t(セルB1の値)を連続的に変化させることで、定在波(定常波)が生じる様子を連続的にグラフに表示することができる。
  ※ 自動的に時刻 t の値を変化させる方法は下記「作成マニュアル」に掲載してある。


作成マニュアル(PDF:337KB)はここをクリック


   表1 表計算ソフトへの入力例

  A B C D E
1 時刻 t 0      
2          
3 右向きの波 (y1) 左向きの波 (y2)
4 振幅 A  2   振幅 A  2
5 周期 T  10   周期 T  10
6 波長 λ  20   波長 λ  20
7          
8 x y1 y2 y1+y2  
9 0 =$B$4*SIN(2*PI()*($B$1/$B$5-A9/$B$6)) =$E$4*SIN(2*PI()*($B$1/$E$5+A9/$E$6)) =B9+C9  
10 0.2 =$B$4*SIN(2*PI()*($B$1/$B$5-A10/$B$6)) =$E$4*SIN(2*PI()*($B$1/$E$5+A10/$E$6)) =B10+C10  
11 0.4 =$B$4*SIN(2*PI()*($B$1/$B$5-A11/$B$6)) =$E$4*SIN(2*PI()*($B$1/$E$5+A11/$E$6)) =B11+C11  
12 0.6 =$B$4*SIN(2*PI()*($B$1/$B$5-A12/$B$6)) =$E$4*SIN(2*PI()*($B$1/$E$5+A12/$E$6)) =B12+C12  










 
209 40 =$B$4*SIN(2*PI()*($B$1/$B$5-A209/$B$6)) =$E$4*SIN(2*PI()*($B$1/$E$5+A209/$E$6)) =B209+C209  


4 結果

 作成したグラフの一例を図1に示す。「作成マニュアル」に従って作成すると、時刻 t を自動的に入力し、グラフを動かすことができる。

B4〜6、E4〜6のセルの値を変更することにより、振幅 A、周期 T、波長λを変化させることができる。

   図1 シミュレーションの例(時刻t=3.5)


5 授業における活用例
 

単 元 「物理基礎」の「波の性質
〔導 入〕  重ね合わせの原理を学習した後、反対向きに進む等しい正弦波が重なるとどのような合成波が生じるか予想する。
 「完成ファイル」“2-改良版(同位相−山と山)”を用いて、シミュレーション結果を見る。
〔展 開〕  進行しない波である定在波が生じることを確認した後、コマ送りしながら腹や節の位置を確認する。さらに、片方の正弦波の振幅、周期、波長を変えてシミュレーションを行い、等しくない波どうしでは定在波ができないことを確認する。
 逆位相の場合は腹と節の位置がどのように変わるか確認するため、「完成ファイル」“3-改良版(山と谷)”を用いてシミュレーションを行う。
〔まとめ〕  定在波について考える場合、合成前の波形の山を定在波の腹であると勘違いしてしまうことがある。静止図を見た場合も、波形が動く様子をイメージすることが重要であることを確認する。


6 参考文献

影森徹:Excelで作る簡単物理シミュレーション(http://www.ciec.or.jp/event/2002/papers/pdf/E0094.pdf)


【定在波(定常波)シミュレーション】

上記シミュレーションは、誰にでも作成しやすいように、できるだけ簡略化したものである。
数式を工夫したり、画面上にボタンを配置したりすることにより、より見やすく、操作しやすいファイルに改良することができる。
なお、本シミュレーションでの完成ファイル及び、改良したファイルを以下に用意した。
完成ファイル(86KB)

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