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珪藻化石の処理方法
ー顕微鏡を使って、化石を見てみようー 

1 はじめに

 珪藻は植物プランクトンであり、生物界における食物連鎖のはじまりに位置する。古生代ジュラ紀に出現し、淡水・汽水・海水のあらゆる水域に生息している。ほとんどが浮遊生活をしているが、例えば川の石ころに付着して生活する種類もある。珪藻の殻はケイ酸質(ガラス質)でできていて、形は弁当箱のようにふたと器からなる。横から見ると四角形でも、上から見ると円形・三角形・四角形・羽根形・ひょうたん形など様々である。群体を形成しているものもある。珪藻の殻だけが堆積してできた『珪藻土』は、断熱材(壁、七輪など)・吸着剤・研磨剤・ろ過剤として私たちの生活に昔から役立っている。
 高等学校の地学の教科書に、課題研究として「地層の堆積環境の復元」が取り上げられている。自分たちの住んでいる土地がどのようにしてできたのかを、珪藻化石を使って調べるという内容である。珪藻は水域環境の違いによって、生息する種類が異なるため、その環境変化を示す指標となる。
 ここでは、岩石(堆積物)から化石を取り出す方法と永久プレパラートの作り方について紹介する。

2 珪藻化石の産地

岐阜県郡上市白鳥 阿多岐(あたぎ)
   阿多岐層(湖成層) 新第三紀鮮新世
   凝灰質砂岩泥岩互層

 昔、この付近の地下で『珪藻土』の採掘が行われていたが、現在では、採集するのは不可能である。
名古屋市港区藤前(ふじまえ)  藤前干潟

 庄内川、新川、日光川の河口に位置する。
 干潮時の潮位が70cm以下になると干潟が出現する。

3 珪藻化石の例

阿多岐産 藤前干潟産
群体 群体

4 『珪藻土』に含まれる珪藻化石の例

   秋田県鷹巣(たかのす)町(現、北秋田市)産
   珪藻土は化石の保存状態もよく、試料に適している。

珪藻土

5 道具

試料(珪藻土、泥炭層、泥岩、シルト岩、海底の泥)、ビーカー、ガラス棒、乾燥器、15%過酸化水素水、試験管、1mol/l塩酸、ホットプレート、ピペット、スライドガラス(76×26mm、厚さ1.0〜1.2mm)、カバーガラス(24×24mm、厚さ0.12〜0.17mm)、封入剤(エンテランニュー)、つまようじ、光学顕微鏡

6 岩石処理方法

☆ 写真番号の順に作業を行う

 写真1

 
凝灰質泥岩
 (阿多岐産)
 写真2

 藤前干潟の泥 (表層部分)
 冷蔵庫で保存する。
 
 写真3


 1〜2gの試料(写真1)をビーカーに入れて、乾燥器(60〜70℃)で数時間乾燥させる。
 干潟の泥のようなやわらかいものは、特に乾燥させる必要はない。
 写真4

 
乾燥器
 写真5

 乾燥させた試料に15%過酸化水素水を加えて煮沸し、ガラス棒でかき混ぜながら有機物(殻の中の色素体など)を分解する。
 煮沸するときは、薬品があふれ出さないように火を調節する
 炭酸塩が含まれているような試料の場合は、過酸化水素水処理のあとに1mol/l塩酸を加えて煮沸し、炭酸塩を溶解する。
 写真6(上) ,写真7(下)

 過酸化水素水処理後のビーカーに水を加えてかき混ぜ(上)、十分沈殿するまで放置する(下)。ビーカーの底にたまった沈殿物の中に珪藻殻が含まれている。この操作を3〜4回繰り返し、過酸化水素水を除去する。
 (沈殿物を試験管に移したほうが、砂粒の混入を防ぐことができて試料を採取しやすい

7 永久プレパラートの作り方

 写真8

 ホットプレート上にカバーガラスを置き、ビーカーの底にたまった沈殿物をピペットで吸い取ってカバーガラスに滴下する。珪藻殻がカバーガラスに定着したら、水分が完全になくなるまで乾燥させる。
 写真9

 封入剤 (エンテランニュー)
 写真10

 ガラス棒を使って封入剤をスライドガラスに滴下する。
 手前は、乾燥したカバーガラス。
 下はタオル。
 封入剤がカバーガラスからはみ出さないように、滴下する量に気をつける
 写真11

 スライドガラスの上にカバーガラスを反対(試料の付いた面を下)にしてかぶせる。
 写真12

 つまようじなどでカバーガラス全体を押して気泡を出し、密着させる。
 写真13

 光学顕微鏡で観察する。

参考文献

 化石研究会編 「化石の研究法 採集から最新の解析法まで」(p.45〜p.50 共立出版 2000)
 野尻湖ケイソウグループ著 「ケイソウのしらべかた」(地学団体研究会 2000)

  

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