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台所で「マグデブルグの半球実験」


1,はじめに
 人間は空気の層の底で生活をしています。空気には重さがあり,地上に住む人の頭(面積約250cm2)には約250kgもの空気の重さがかかっていると言われています(これを大気圧と言います)。1654年,ドイツのマグデブルグという町の市長ゲーリケは,半球を2つ合わせてその中を真空にして,それを両側から馬に引かせるという実験を行いました。合計16頭の馬が全力で引いて,やっと引き離すことができたそうです。この実験は真空というものの存在を世の中に知らせることになりました。地上で真空になった入れ物には,その外側から大気圧が容赦なく押し付けます。これと同じことを,台所のステンレスボウルを使ってやってみましょう。さあ,あなたの力でボウルを引き離すことができるでしょうか?


2,準備
@台所用ステンレスボウル2個(同じもの),A厚紙,Bエチルアルコール(薬局で買える。500mlで約1000円),Bマッチ,C食器洗い用水きりバット,Dぞうきん

3,実験方法
@ステンレスボウルの周りより少し大きめの輪を描き,ハサミで切り取る。 A内側に余裕を取って線をかき,カッターで切り取る(ドーナツのような輪になる)。 B厚紙の輪を水に浸しておき(これがパッキングの役目をする),ボウルにアルコールを少し入れる。
※ボウルの下には濡れぞうきんを敷いておくこと。


Cマッチに火をつけてボウルに放りこみ,すばやくパッキングを置いて,その上にもう一つのボウルをずれないようにかぶせる。
D重ねたボウルを水槽に入れて冷やす。 E2つのボウルがはずれるかどうか,引っぱってみよう。
※引っぱってもはずれない時は,パッキングの厚紙が乾くのを待つか,マイナスドライバーですき間を作って中に空気を入れるとはずれる。


4,参考
 2つ重ねただけのとき(左図)は,大気圧が外側からボウルを押す力と同じ力で,ボウルの内側からも空気が押しています。ボウルの中でアルコールを燃やしてボウルをかぶせると,中の酸素がなくなり火は消えます。ボウルの中にはアルコールが燃える時にできた二酸化炭素と水,熱せられてできたアルコールの気体だけになります。そして,二酸化炭素は水に溶けこみ,アルコールも冷やされると同時に液体に戻るので,ボウルの中にはほとんど気体が残りません(右図)。その結果,実験後の右図では気体が少なくなり,内側から押す力が小さくなり,大気圧に押されたボウルを引き離すのに,大きな力が必要となるのです。


※参照:『ガリレオ工房の身近な道具で大実験(第1集)』(大月書店

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