海に帰った哺乳類 「クジラとカバは,近縁だった!?」



バンドウイルカ




カマイルカ


ベルーガ
 左の写真は,すべてクジラ目(もく),クジラやイルカの仲間です。
 クジラとイルカの違いは,体の大きさだけで分類学的には同じ仲間です。上から,バンドウイルカ,カマイルカ,ベルーガで,これらはクジラ目と呼ばれる仲間に入ります。
 
 約5,600万年前に生息した「シノニクス」は,クジラ目の祖先と考えられています。最近の研究では,偶蹄(ぐうてい)目と呼ばれるカバやウシの仲間と近い祖先をもっていることが分かってきました。ただ,正確にどの動物が近い仲間なのかは今後の研究成果が待たれます。

 このように,現在海中を泳いでいるクジラ・イルカの仲間たちは,6,000万年前には,大地を駆け回っていたのですが,5,500万年前には再び水中に戻っていったと考えられているのです。

 海に帰った哺乳類は,環境に適応し,それぞれの道を歩み出します。クジラ目の中には,「ハクジラ」と「ヒゲクジラ」に大きく分けることができます。「ヒゲクジラ」の仲間には,最大のクジラ「シロナガスクジラ」も含まれます。

  「ハクジラ」の仲間の中に,「バンドウイルカ」や「カマイルカ」などが含まれます。
 
 バンドウイルカの多くは,世界中の暖かい海に生息しており,冷温帯から熱帯までと幅広く分布しています。体の大きさや色などは,分布域により極めて変異に富んでおり,個体差も大きいです。また,100頭から多いときには数千頭にもなる群れをつくり,魚類やイカなど,主に群集性の獲物を集団で効率的に捕食することが多く,カニやタコなども食べるそうです。英名のBottlenose dolphinは,吻(ふん:口先)から頭部が,瓶(ビン)の形に似ていることから名づけられました。船首波〔せんしゅは:船が進むときに舳先(へさき)にできる波〕や,航跡(こうせき)にできる波に好んで乗ることが知られており,航行中の船舶(せんぱく)からその姿を観察できることがあります。
 


 ベルーガはシロイルカとも呼ばれ,その名前の通り真っ白な体をしています。また子供のころの体色はグレーで,成長するに従って白くなっていきます。他のクジラ類と違い,背びれがなく,首や前頭部が良く動くのも特徴です。北極とその周辺部という寒い地域に住んでいるため,皮膚の下に厚い脂肪をもっており体つきはずんぐりしています。ベルーガは長いものでは5,000キロメートルに及ぶ越冬地と繁殖地の間の回遊を行うことが知られています。繁殖地は大きな川の河口などで,大きな群をつくって出産と育児を行います。


 それぞれの環境に適応してきた,イルカたち。それは私たちも同じです。私たち人間もサルの仲間として,進化し現在に至ります。同じ仲間を観察し,比較することで「進化」について学び,生命の神秘に触れることができます。



 一つ一つの生命を大切にし,ともにくらせる環境を守ることが,必要だと感じてもらえたでしょうか?
 水族館の生き物たちを見て,心を豊かにしながらそんなことを,思っていただけたら,光栄です。



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