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ビスコースレーヨンの合成

1 目的
  ろ紙からビスコースレーヨンを合成し、再生繊維についての理解を深める。


2 準備
  器具 シャーレ2個、50ml三角フラスコ、ゴム栓、ビーカー(50ml、300ml>、500ml)、10ml注射器、注射針、ピンセット、温度計、ガラス棒、はさみ、新聞紙
  薬品 6mol/l水酸化ナトリウム、2mol/l水酸化ナトリウム、二硫化炭素、無水硫酸ナトリウム、硫酸亜鉛、2mol/l硫酸、ろ紙


3 方法
 (1) シャーレに6mol/l水酸化ナトリウム水溶液を入れ、その中にろ紙を一枚浸し、ふたをして1日放置する。ろ紙がやや透明になり、弾力のあるアルカリセルロースになる。
 (2) このろ紙(アルカリセルロース)を取り出し、新聞紙の間にはさんで余分な水酸化ナトリウム水溶液を取り除く。

 (3)  はさみでろ紙(アルカリセルロース)を小さく切り50ml三角フラスコに入れ、通風のよい場所で約5mlの二硫化炭素(引火に注意)を加え、ゴム栓をして湯浴中で約40〜45℃に保ちながら2時間ほど反応させる。最初は黄色を帯びてくるが、時間が経過するにつれて赤みを帯びた褐色のセルロースキサントゲン酸ナトリウムになる。

 (4)  試験管内容物をシャーレに出し、黄褐色の固体をピンセットでつまみとり50mlシャーレに入れる。そこへ、2mol/l水酸化ナトリウム水溶液10mlを加え、ガラス棒で攪拌しながら溶かす。溶けにくいときはしばらく放置すれば溶けやすくなる。黄褐色の粘性のある溶液になる。できるだけ粘性が大きい方がよいが、粘性が大きすぎて注射器に吸い込むことが困難であったら、さらに2mol/l水酸化ナトリウム水溶液を追加する。 

 (5)500mlビーカーに2mol/l硫酸500mlを入れ、そこへ無水硫酸ナトリウム100g、硫酸亜鉛10gを加えて溶かし、凝固液とする。
 (6) 針を取った注射器に(4)の溶液を吸い込み、針をつける。ピストンを押し、針の先に小さな溶液の玉を作り、これを(5)の凝固液中に入れる。はじめは玉をピンセットで少し引っ張り、後はピストンを押して静かに凝固液中に押し出す。

 (7) しばらく放置し、繊維の黄色が抜けたら水の入ったビーカーに移し、水洗いした後乾燥させる。  

4  備考

セルロースを水酸化ナトリウム水溶液に浸すと、セルロース中のグルコースの6位の-OH基が-ONa基に変わり、アルカリセルロースを生成する。これを二硫化炭素に作用させると-ONaが-OCSSNaとなったセルロースキサントゲン酸ナトリウムになる。セルロースキサントゲン酸ナトリウムは、水にも溶解するが、水酸化ナトリウム水溶液に溶けて粘性のある黄褐色の液となりビスコース溶液と呼ばれる。これを凝固液に入れると-OCSSNaから二硫化炭素が取れて-OH基にもどる。アルカリセルロースを簡単のためにCell-ONaで示すと、その反応は次のとおりである。

Cell-ONa   +   CS2  →   Cell-O-CS-SNa  +  H2O

 アルカリセルロース  二硫化炭素    セルロースキサントゲン酸ナトリウム                  

  Cell-O-CS-SNa + H2SO 4 → 2Cell-OH + CS2 + Na2SO 4

                         (再生)セルロース 


5 留意点
 (1) 二硫化炭素は毒性、引火性があるので、実験はドラフト内で行い、火気には十分注意する。
 (2) 繊維はあまり丈夫ではないので、細かく切れないように注意する。


6 参考文献
 (1) 化学教育研究会編 「授業に役立つ化学実験の工夫」 大日本図書(1992)
 (2) 武田一美著「おもしろい化学の実験」 東洋館出版社(1992)
 (3) 日本化学会編「実験で学ぶ化学の世界3」 丸善(1996)



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