発泡スチロールのリサイクル
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発泡スチロールのリサイクル

1 目的

 家電製品の梱包剤や食品トレーなどに多く使用されている発泡スチロールは、ポリスチレン(PS)を約10〜50倍に膨張させているため、耐衝撃性や保温性に富んでいる。しかしいったん廃棄されるとかさばるごみとして問題になり、リサイクルが積極的に進められている。ここでは、発泡スチロールを溶解し、新たに再発泡させて成型品を作るというリサイクルを行う。

2 準備

器具

  アルミ皿(市販の鍋焼きうどんの容器でよい)、不要の発泡スチロール製品、万能ばさみ、またはカッター、200ml三角フラスコ、ゴム栓、鍋、ボールこし器(ミネックスメタル製、外径3.5、4.5、5.5、6.5、7.5cmなどがある。)、ピンセット

薬品

トルエン、n−ペンタン

3 方法
   
(1) 発泡スチロール5gをアルミ皿にのせ、トルエンを約12ml加えて発泡スチロールをよく溶解させ、厚みがなるべく均一になるようにしてドラフト内に静置しておく。1週間以内で半透明なシート状のPSが生成する(PSシートは6gになるまでよく乾燥させる)。乾燥が不十分な場合はPSシートがアルミ皿からはがれにくい。なお、ホットプレート(約40〜50℃)を使用する場合は、乾燥が約1日に短縮できるが、トルエンで溶解後、溶液が完全に均一になるまで1時間ほど放置してからホットプレートにかけたほうが気泡の少ないきれいなシートができる。
(2) アルミ皿からはがしたPSシートをはさみやカッターで3〜5mm角に切断し、再生PSペレットをつくる。
(3) 三角フラスコにPSペレットを入れて、n−ペンタンを十分量(ペレットの体積の5倍以上)加え、ゴム栓をして、一晩浸漬する。浸漬が十分かどうかは鍋に沸かした沸騰水にペレットをひとかけら入れてみて発泡することを確認してみる。もし発泡しない場合はさらに一晩浸漬させる。浸漬時間が長くなりすぎると、ペレットが溶け出して、餅状になり固まりだす。この場合は固まりを手で引き裂いたり、はさみで切断したりするが、発泡効率は低下する。
(4)  PSペレットをボールこし器にほぐして入れ、ピンセットを用いてこし器を沸騰水中に入れる。熱湯につけた直後から瞬間的にPSペレットが発泡する様子が観察できる。直径3.5cmの球を作るのに、浸漬ペレットは約3g、直径5.5cmの球を作るのに、浸漬ペレットは約5g必要である。
(5)  発泡後、ピンセットで取り出し、室温に戻るのを待って発泡スチロール球をボールこし器から取り出す。触ってみると弾力があり、球の断面を見ると一つ一つのペレットが発泡している様子がわかる。

4 留意点
(1)  n−ペンタンは沸点36℃、引火点マイナス40℃で揮発性が高いので、直射日光の当たる場所に置かないように、火気に気をつける。n−ペンタンを使用する実験台とガスコンロは必ず離して置くようにする。
(2)  n−ペンタンは繰り返し使用することができるが、ペレットから溶け出したトルエンが少しづつ混合してくるので、トルエン臭が強くなり、浸漬中にペレットが早く餅状になるようならば新しいペンタンに取りかえる。

5 参考文献
 (1)金綱秀典 「化学と教育」 44巻、p597(1996)
 (2)椚田一文 「化学と教育」 41巻、p240(1993)


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