back

薬品でミカンのうす皮をむく

1 目的

 ミカンの缶詰に使われているミカンは、塩酸と水酸化ナトリウムで皮をむいてある。本実験は、工業的に行われている操作を簡単かつ短時間に行う。

2 準備

[器具] 500mlビーカー、ガラス棒、温度計、ガスバーナー、三脚、金網
[薬品] ミカン(オレンジ、グレープフルーツなど)、0.4mol/l塩酸、0.3mol/l水酸化ナトリウム水溶液、フェノールフタレイン

3 方法

(1) ミカンの外側の皮をむき、房ごとにバラバラにする(写真1)。

(2) ミカン1個分の房を、あらかじめ約45℃に加熱した0.4mol/l塩酸250mlが入ったビーカーに入れ、ガラス棒で約10分間かき混ぜる(写真2)。かき混ぜるスピードが速いと実が崩れやすいので注意する。
 
写真1 ミカンを小房に分けて準備(写真はグレープフルーツ) 写真2 皮が溶けてきた


(3) 塩酸を捨て、水で4回洗う。

(4) あらかじめ約45℃に加熱した0.3mol/l水酸化ナトリウム水溶液を250ml加え、約5分間かき混ぜる(写真3)。
 
写真3 中身が見えてきた 写真4 おいしそうなグレープフルーツ!


(5) 水酸化ナトリウム水溶液を捨て、水で4回洗い、その洗浄液を一部取り、フェノールフタレインを2滴加え、色が付かないことを確認して、あと5回程洗う。

4 結果

 塩酸を加え攪拌(かくはん)すると、皮の一部がはがれだし一部溶ける。次に、水酸化ナトリウム水溶液に入れ攪拌すると、すべての皮がきれいにむけ、ミカンの缶詰に使われているミカンのようになる。この方法でむいたミカンは食べることもできる(写真4)。

5 留意点

(1) 温度とかき混ぜる時間は、あくまでも目安である。皮の薄い小さいミカンなら短時間でできる。夏ミカンなどでは当然時間がかかる。

(2) 通常、果物の皮はアルカリを用いてむくことができるが、ミカンの場合はアルカリのみで処理すると一部分残ってしまう。そのため、塩酸ではじめに皮全体を膨張させてからアルカリで溶かす。

6 備考

 酸、塩基によって果実のペクチン質を溶かし、皮をむくのであるが、白いミカンの房は、ペクチンが多く含まれ、果汁の入っている粒の皮はセルロースの割合が増えるので、白いミカンの房のみがむけるのである。ペクチン質は一般にガラクツロン酸が鎖状に結合したもので、細胞壁中でセルロースなどと物理的に結合していると考えられる。

7 参考文献

 「おもしろ化学実験集」 大日本図書(1994)
 「モノづくり解体新書 3の巻」 日刊工業新聞社(1993)


back