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指紋の検出
1 目 的
物に触れると指先の隆起線がしばしば痕を残す。これを指紋という。指紋を残していることはあまりはっきり分からないが、化学的に処理すれば指紋を目に見えるようにすることができる。この実験では典型的な指紋の検出方法を用いて有機化学反応の1つである付加反応を理解する。 |
2 準 備
白い紙、はさみ、三角フラスコ(100mlまたは200ml)、ヨウ素の結晶、ガスバーナー、三脚、金網、ピンセット、ゴム栓 |
3 方 法
(1) | 紙を細長く切る。その大きさは三角フラスコの中に入れられる程度の幅と長さにする。 | ||
(2) | 紙片の一端に指先をしっかりと押しつける。このとき指先に脂肪分が多くついているとはっきりした指紋が採れるので、押しつける前に額に指を触れさせるとよい。 | ||
(3) | 三角フラスコに米粒程度の大きさのヨウ素結晶を入れ、ガスバーナーでヨウ素の蒸気(紫色)が出るまで穏やかに加熱する。 | ||
(注意)ヨウ素の蒸気は有毒なので、ゴム栓で三角フラスコの口をふさぐか、またはドラフト中で行い、蒸気を吸わないようにすること。 | 取り出したもの | (4) | ピンセットを用いて紙片を三角フラスコに入れると数秒で指紋が現れる。 |
4 備 考
皮膚の穴を通してしみ出してくる汗には、脂肪、脂肪酸および塩化ナトリウムなどの化学物質が含まれる。脂肪のしみ出しは皮膚を湿らせ、柔らかく保つ自然の仕組みである。指紋が付くと脂肪および脂肪酸物質がそこに残る。ヨウ素はこれらの物質と反応し、暗褐色の化合物をつくる。すなわちヨウ素の脂肪への付加が起こる。このようにして蒸発するヨウ素を脂肪と反応させ、指紋の輪郭を見えるようにすることができる。脂肪だけがヨウ素と反応し褐色となるので、指紋の隆起、すなわち紙と接触した指の模様が現れる。
指先の隆起はイタリアのMarcello Malpighi(解剖学)によって1686年に発見された。たとえ一卵性双生児でも世界の二人の人間が同じ指紋を持つことはないので、お互いに指紋を比較し合うとおもしろい。今回紹介した方法は今でも指紋の検出に使われるが、他にはどういう方法があるか調べてみるとよい。ちなみに犯罪の場に残された指紋は、すすやアルミニウム粉末と白墨の粉の混合物を振りかけると見えるようになる。これは粉が油状の指紋に付着するためである。
5 参考文献
日本化学会訳編「身近な化学実験U」丸善(1991)
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