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大きな斜方硫黄の結晶


1 目的

 結晶の形が肉眼で分かるくらいの大きさ(1cm程度)のものを作り観察する。

2 原理
 二硫化炭素に粉末硫黄を溶解し、大型試験管の中でゆっくり溶媒を蒸発させて大きい結晶を得る。

3 準備
  〔器具〕大型試験管、ビーカー、ろうと、ろ紙
  〔薬品〕二硫化炭素(沸点 46.3℃)、粉末硫黄

4 方法
 (1) ビーカーに粉末硫黄約20gを取り、二硫化炭素50mLを加えてよく溶かす(写真1)。気温が低いときは、40℃程度の湯に浸けて溶かす。

(写真1)

 (2) (1)の溶液をろ過し、大型試験管2〜3本に入れる。(下から3〜4cmほど)
 (3) 密閉しない程度に綿などで試験管の口をふさぐ(写真2)。
(写真2)

 (4) ドラフト内に置き、溶媒の蒸発により結晶が析出してくるのを待つ。
    *気温により、溶媒の蒸発程度に大きな差があるので、一日おいて様子を見る。
     綿栓を減らしたり、溶媒を足したりして調節する。
 (5) 結晶が観察しやすい大きさになったら取り出す(写真3,4)。
(写真3) (写真4)


5 注意事項
 (1) 二硫化炭素の扱いについて
   ・蒸気を吸わないよう注意し、充分に換気を行う。
   ・気温の高いときや湯せんにしたときは特に蒸発しやすくなるので、ラップなどでビーカーを覆うとよい。
   ・非常に引火しやすいので、火気に近づけない。
   ・光により徐々に分解し溶液を褐色にするので、溶液はなるべく光の当たらないところに置く。

  〔参考〕(化学便覧より)
   ・二硫化炭素100gに対する硫黄の溶解度

温度(℃) 0 10 20 30 40
硫黄の溶解度 24.1 29.9 42.4 63.4 96.0

   ・二硫化炭素の蒸気圧

蒸気圧(mmHg) 200 400 760
温度(℃) 10.4 28.0 46.5


 (2) 結晶の析出について
   ・ビーカーやシャーレでは溶媒の蒸発が速すぎて大きな結晶ができにくい。
    大型試験管と綿栓を使って、蒸発の速さを調節する。
   ・温度により、溶解度が大きく変わるので、温度をなるべく一定にした方がきれいな結晶ができる。
   ・細かい結晶が複数できた場合は、一度取り出し、種結晶として利用する。

6 指導上の留意事項
 ・生徒実験には向かないが、できた結晶は、「単斜硫黄、ゴム状硫黄を作る実験」と組み合わせて観察用に利用できる。
 ・気温にもよるが、大きいものを作るには最低でも2〜3日はかかるので、指導計画に合わせて余裕をもって作っておくとよい。

7 参考文献
 化学便覧基礎編U(丸善出版)
 増訂 化学実験事典 (赤堀史郎 木村健次郎 著/講談社)