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土の中の鉄イオンとアルミニウムイオンの検出


1 目的

 土の中の鉄イオンとアルミニウムイオンは、酸で抽出される成分である。それらを、適切な試薬を用いて検出する。

2 準備

[器 具] 試験管、漏斗、ろ紙、試験管立て、駒込ピペット、ビーカー、スタンド
[薬品等] 庭土、ヘキサシアノ鉄(U)酸カリウム水溶液、フェノールフタレイン溶液、希塩酸(1mol/l程度)、水酸化ナトリウム水溶液(1mol/l程度)

3  方法結果
(1) 庭土20gに希塩酸(1mol/l程度)40mlを加え、5分間攪拌する。その後、土と塩酸の混合物をろ紙でろ過して、ろ液を得る。(写真1)
(2) (1)で得られたろ液を、試験管に5ml、10mlずつ2本に分ける。
(3) (2)のろ液が5ml入った試験管に、ヘキサシアノ鉄(U)酸カリウム水溶液を加える。濃青色に変化して、鉄分(鉄(V)イオン)の存在が確認できる。(写真2)

(写真1) (写真2)
(4) (2)のろ液が10ml入った試験管に、水酸化ナトリウム水溶液(1mol/l程度)を駒込ピペットで少しずつ加える。ろ液の変化の様子を確認しながら、最終的には水酸化ナトリウム水溶液を過剰に(10ml前後)加える。
初めの段階では、溶液の塩基性により、鉄(V)イオンとアルミニウムイオンが、それぞれ水酸化アルミニウムAl(OH)3と水酸化鉄(V)Fe(OH)3に変化する。試験管内にゲル状の混合物が確認できる。
水酸化ナトリウム水溶液が過剰に加わった段階ではAl(OH)3が溶解し、テトラヒドロキソアルミン酸イオン[Al(OH)4]-が生成する。水酸化鉄(V)Fe(OH)3は溶けずに残る。
(5) 水酸化鉄(V)Fe(OH)3とテトラヒドロキソアルミン酸イオン[Al(OH)4]が混合している溶液を、ろ紙でろ過する。ろ紙にはFe(OH)3の赤褐色(ここではやや茶色っぽく見えることが多い)のゲル状物質が残る。(写真3)
(6) (5)のろ液を2本の試験管に分ける。
(7) ろ液の入った1本の試験管にヘキサシアノ鉄(U)酸カリウム水溶液を加える。鉄(V)イオンが抜けているので、何も反応しないことを確認する。(写真4)
(8) ろ液の入ったもう1本の試験管にフェノールフタレイン液を1、2滴加え溶液を赤変させてから、希塩酸(1mol/l程度)を駒込ピペットでゆっくりと滴下する。
溶液が淡いピンク色になったときに、水酸化アルミニウムAl(OH)3の白色ゲル状物質が、はっきりと確認できる。
(写真5)
(写真3) (写真4) (写真5)

4 考察

(1) 土はその土壌鉱物中に、鉄分を酸化鉄(V)などの状態で含んでいる。この鉄分は酸により溶脱し、鉄(V)イオンとして溶け出す。
(2) 鉄(V)イオンは、ヘキサシアノ鉄(U)酸カリウム溶液に対して濃青色の沈殿を生成する。これは鉄(V)イオンの検出反応として利用されている。
(3) 鉄(V)イオンは水酸化ナトリウム水溶液に対して赤褐色の水酸化物を生成する。これは過剰の水酸化ナトリウム水溶液に対しても溶解しない。
(4) 土はその土壌鉱物中に、アルミニウムを複雑な錯体の状態で含んでいる。このアルミニウムは酸により溶脱し、アルミニウムイオンとして溶け出す。
(5) アルミニウムイオンは少量の水酸化ナトリウム水溶液に対して白色ゲル状の水酸化物を生成する。これは過剰の水酸化ナトリウム水溶液に対して溶解する。

5 留意点

(1) 鉄分の検出は、チオシアン酸カリウム水溶液でも可能である。この場合は、赤色が確認される。
(2) 溶液の滴下にはビュレットを用いるが、駒込ピペットでゆっくり滴下すれば手軽に観察できる。
(3) 実験に用いる土は、腐葉土ではなく、庭土をスコップ等で掘り出したものを使用するのが望ましい(腐葉土では土壌鉱物が乏しい場合があるため)。

6 参考文献

林 良重  「ときめき化学実験」 (裳華房 1993)

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