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過マンガン酸カリウムを用いたCODの測定

1 目的

 水質環境を知るうえでの1つの指標となるCODの値を,高校化学の知識を用いて測定する。

2 CODの定義

 強力な酸化剤(過マンガン酸カリウムや二クロム酸カリウムなど)を用いて一定の条件で試料水を処理したとき,消費される酸化剤の量を求め,それに対応する酸素の量(試料水1Lにおける酸素の質量(mg))に換算して表したもの。

 過マンガン酸イオンの反応 MnO4- + 8H+ + 5e- → Mn2+ + 4H2O
 酸素の酸化剤としての反応 O2 + 4e- → 2O2-

 上の反応式のように,過マンガン酸カリウムは1molにつき電子を5mol奪うことができる。下の反応式から,酸素が5/4molあれば,過マンガン酸カリウム1molと同じように5molの電子を奪うことができる。したがって,CODは,(試料水1Lを酸化するのに必要な過マンガン酸カリウムの物質量(mol))×5/4×32(酸素のモル質量)×1000(mgに換算)で計算できる。

3 準備

 [器具]  ビーカー,ガスバーナー,三脚,金網,沸騰石,メスフラスコ,ホールピペット,ビュレット,コニカルビーカー,メスシリンダー,漏斗,漏斗台,ろ紙

 [薬品]  湖沼または河川の水(以下『試料水』という),過マンガン酸カリウム,シュウ酸,希硫酸,硝酸銀水溶液

4 実験

(1) 正確に0.01mol/Lのシュウ酸水溶液を調整する。
(2) 約4×10-3mol/Lの過マンガン酸カリウム水溶液を準備する。
(3) 試料水100mLに硝酸銀水溶液を少量加え,沈殿をろ過する。ろ液に希硫酸を加え,そこに過マンガン酸カリウム水溶液50mLを加えて,約5分間煮沸する。このとき,試料水中の有機物は酸化される。
(4) (3)にシュウ酸水溶液50mLを加えて混ぜる。
(5) (4)に純水を加えて,正確に250mLにする。
(6) (5)の溶液を50mL(全体の5分の1)量り取り,ビュレットから過マンガン酸カリウム水溶液を滴下する。溶液がわずかに赤紫色になったところを終点とする。
(7) これとは別に,シュウ酸水溶液を10mLをコニカルビーカーにとり,希硫酸を加えて,ビュレットから過マンガン酸カリウム水溶液を滴下する。このことにより,過マンガン酸カリウム水溶液の正確な濃度が分かる。


図 溶液の煮沸

5 結果・考察

(1) 正確に0.01mol/Lシュウ酸水溶液と過不足なく反応する過マンガン酸カリウム水溶液の体積は9.90mLであった。
  このことから,過マンガン酸カリウム水溶液のモル濃度は4.04×10-3mol/Lであることが分かった。
(2) 4−(6)において必要とする過マンガン酸カリウム水溶液の体積は0.43mLであった。
(3) このことから,試料水20mL(100mLの5分の1)と過不足なく反応する過マンガン酸カリウム水溶液の体積が0.53mLと分かった。[(はじめに加えた過マンガン酸カリウム水溶液50mLの5分の1)+(滴定で加えた0.43mL)−(シュウ酸を酸化するのに必要な9.90mL)]
(4) 計算をすると,4.04×10-3×(0.53/1000)×(1000/20)×(5/4)×32×1000で,CODは4.3mg/Lであることが分かった。
(5) 分光光度計を用いたパックテストの結果では,2.523mg/Lと表示された。オーダーとしては合致しているが,やや差がある。

6 留意点

(1) シュウ酸と過マンガン酸カリウムの反応は低温では反応に時間がかかるため,80℃程度の温度で反応させるとよい。
(2) 硝酸銀は,試料水中の塩化物イオンを除去するために加えている。塩化物イオンが残っていると,有機物だけでなく塩化物イオンも過マンガン酸カリウムによって酸化されるからである。
(3) より正確に測定するためには,純水を用いて試料水と同様の実験を行う。

7 指導上の留意点

この実験教材は,高等学校学習指導要領解説(理科編)における
 化学基礎      (3) 物質の変化 イ 化学変化 (イ)酸化と還元
                   ウ 物質の変化に関する探究活動
 理科課題研究    (3) 自然環境の調査に基づく研究
という項目において利用できる。


8 参考文献

 日本分析化学会北海道支部 編 『水の分析 −第4版−』 化学同人
 日本化学会 編 『実験で学ぶ化学の世界2 物質の変化』 丸善


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