黒板を利用した電池の演示実験(ボルタ電池、ダニエル電池、鉛蓄電池)
1 目的
黒板はり付けカートリッジ式実験器具を作製し、電池の演示実験を行う。
2 黒板はり付けカートリッジ式実験器具の作製
[材料]マグネットシート(30cm×20cm、白)、再生PETクリヤカードケース(A5サイズ、ハード)、PPクリヤカードケース(B6サイズ、ソフト、セルとして利用)、モール(電気コード用カバー、白)、超強力両面テープ、プロペラ付き太陽電池用モーター、クリップ付きマグネット(太陽電池用モーターはり付け用)、リード線(赤、黒各80cm程度)、丸型マグネット(直径2〜3cm、リード線固定用)
(1) 作製方法
ア |
再生PETクリヤカードケースのカード口を2cm幅で切り取る。(セルとして入れるPPクリヤカードケースの先端が外に出るようにするため) |
イ |
カード口を切り取った再生PETクリヤカードケースの縦幅と横幅に合わせてモール(横幅22.8cm1本、縦幅12.5cm2本)を切り取る。 |
ウ |
マグネットシートに切り取ったモールを再生PETクリヤカードケースと同じサイズで凹形になるように両面テープで接着する。 |
エ |
モールの上に両面テープをつけ、再生PETクリヤカードケースをカード口が下になるように接着する。 |
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<写真2 黒板はり付けカートリッジ式実験器具> |
<実際の使用図> |
(2) 作製上の留意点
ア |
カードケースの中には、溶液が漏れるものがある。カードケースの端や角の接着状態をよく見て、漏れそうにないものを選ぶ。 |
イ |
マグネットシートは、溶液の色を観察しやすくするため、白を使用する。 |
ウ |
使用する試薬の量をできるだけ少なくするため、モールは一番細いサイズのものを使用する。 |
エ |
板書するときにリード線が邪魔にならないように、リード線の中央あたりに小さい丸型マグネットで固定しておくとよい。 |
3 ボルタ電池
(1) 準備
[器具] 黒板はり付けカートリッジ式実験器具、亜鉛板、銅板
[薬品] 0.5mol/l硫酸、3%過酸化水素水
(2) 方法
ア |
PPクリヤカードケース(セル)に0.5mol/l硫酸を半分程度入れる。 |
イ |
リード線で銅板と亜鉛板を太陽電池用モーターにつなぎ、硫酸を入れたセルの中に素早く浸し、モーターの回転する様子を見る。 |
ウ |
モーターの回転が弱くなってきたら3%過酸化水素水を銅板の周りに加える。起電力が回復しモーターの回転が強くなる。 |
(3) 留意点
電池で使用する金属板の大きさは40mm×150mm程度で、事前に金属たわしなどでみがいておく。
4 ダニエル電池
(1) 準備
[器具] 黒板はり付けカートリッジ式実験器具、亜鉛板、銅板、ビスキングチューブ
[薬品] 0.1mol/l硫酸亜鉛水溶液、1mol/l硫酸銅(U)水溶液
(2) 方法
ア |
PPクリヤカードケース(セル)に0.1mol/l硫酸亜鉛水溶液を半分程度入れる。 |
イ |
ビスキングチューブの中に硫酸銅(U)水溶液を入れ、銅板を浸す。 |
ウ |
それぞれの金属板と太陽電池用モーターをリード線でつなぎ、硫酸亜鉛水溶液を入れたセルの中に素早く浸し、モーターの回転する様子を見る。 |
(3) 留意点
ア |
ビスキングチューブが破れるのを防ぐため、この電池で使用する銅板の角は丸めておくとよい。銅板の大きさは30mm×150mmのものを使用した。 |
イ |
隔膜にビスキングチューブを用いたので、溶液の混合がほとんど無く、溶液は再使用できる。 |
5 鉛蓄電池
(1) 準備
[器具] 黒板はり付けカートリッジ式実験器具、鉛板2枚、網(鉛蓄電池電極接触防止用)、手回し発電機(ゼネコン)
[薬品] 3mol/l硫酸
(2) 方法
ア |
PPクリヤカードケース(セル)に3mol/l硫酸を半分程度入れる。 |
イ |
硫酸に2枚の鉛板(うち1枚は網で覆う)を接触しないように浸す。 |
ウ |
リード線で2枚の鉛板に太陽電池用モーターをつなぎ、モーターが回るかどうか調べる。 |
エ |
次にリード線をはずし、2枚の鉛板にゼネコンをつなぎ、約1分間ハンドルを回転させ充電する。鉛板上に褐色の酸化鉛(W)が生じる。 |
オ |
ゼネコンをはずし、再び太陽電池用モーターにつなぎ、回転の様子をみる。 |
(3) 留意点
ア |
内部抵抗を小さくし、大きな電流を流すために、極板間の距離はなるべく近くするとよい。 |
イ |
実験の安全性や廃液のことを考えると、電解液に3mol/l硫酸の代わりに2%硫酸ナトリウム水溶液を用いるとよい。 |
6 指導上の留意点
(1) 電池の原理の説明が終了した後に、黒板はり付けカートリッジ式実験器具を利用すれば、短時間にかつ容易に復習できるので、理解を深め、内容を定着させる効果が期待できる。
(2) 黒板上で、各電極で起こっている反応や電子の流れをリアルタイムで記入することにより、電池の原理を実感させることができる。