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塩化コバルト(U)溶液を用いた簡易温度計


1 目的
 

塩化コバルト(U)の結晶水の有無による色の変化を確認する。
塩化コバルト(U)のエタノール−水混合溶媒中における平衡移動を利用して簡易温度計を製作し、「平衡」をより身近なものとしてとらえさせる。

2 準備

[器具] 試験管 500mlビーカー 駒込ピペット 温度計 試験管立て ゴム栓 ラベル
[薬品] 塩化コバルト(U) エタノール溶液 蒸留水 氷 湯

3 方法

(1) 塩化コバルト(U)をエタノールに溶かし、2%溶液を調整する。(濃い青色になる)〈写真1〉
(2) 5個の500mlビーカーに水を入れて、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃になるように、氷と湯で調整する。〈写真2〉
〈写真1〉 〈写真2〉     


(3) 5本の試験管を用意し、(1)で調整した塩化コバルト(U)溶液をそれぞれ3分の1ほど入れる。
調節する温度(15℃、20℃、25℃、30℃、35℃)を書いたラベルをはる。
(4) 5本の試験管を(2)で調整した各ビーカーに入れて、試験管内の液温とビーカーの水温が同じになるまで放置する。〈写真3〉
(ビーカーの水温を一定に保つよう、氷と湯で微調整をする)

〈写真3〉


(5) 試験管内の溶液がビーカーの水温になじんだら、駒込ピペットを用いて少量ずつ蒸留水を加える。
溶液の色が紫になったところで蒸留水を入れるのを止め、試験管にゴム栓をする。(エタノールの蒸発を防ぐ)
それぞれの温度で同様に行い、すべての試験管が同じような色になるよう調整する。〈写真4、5〉
(溶液の調整中、適宜ビーカーの水温を微調整する)
〈写真4〉 〈写真5〉


(6) すべての溶液について、調整が終わったら、試験管をビーカーから出して、温度順に試験管立てに並べて放置する。<写真6>
〈写真6〉

4 結果・考察

周囲の気温により、赤紫になるものと濃い青色になるものができる。現在の気温が、色の変わり目により判断できる。(下の<写真7>の場合、27℃)
〈写真7〉

5 留意点

(1) 温度調整用のビーカーは水温を±1℃程度の範囲で微調整をする。1000mlビーカーがあれば、その方が温度があまり変化せず好都合である。
(2) 試験管に入れる塩化コバルト(U)溶液の量に注意する。多すぎると、滴下した水が底に沈んであまり混ざらなくなる。
(3) 駒込ピペットで加える水の量は微妙なので、注意深く調整する。入れすぎると、溶液の色が青色に戻らなくなる。
(4) デジタル温度計があれば、温度変化が分かりやすく調整がしやすくなる。
(5) 温度範囲を15℃〜35℃とした例を紹介したが、気候により範囲を変えるとよい。

6 参考

塩化コバルト(U)二水和物の色は赤色、無水物の色は青色で次の平衡で示される。
 CoCl42- + 6H2O ⇔ [Co(H2O)6]2+ + 4Cl- + Q kJ (Q>0)  
 (青)         (赤) 
エタノール溶液中では、無水物であるため青色となるが、水を加えることにより、平衡が右に移動し、赤色の二水和物を生じて溶液は紫色になる。
この反応は、右向きが発熱反応であるため、温度が高くなると平衡が左に進み、低くなると右に進む。
この簡易温度計では、調整した温度より温度が高くなると溶液は青色になり、低くなると赤紫色になる。

7 参考文献

日本化学会 「実験による化学への招待」   (丸善 1987)


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