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交流電灯装置を用いた実験

1 目的 

  電灯の明るさは水溶液中のイオンの量に関係することを演示実験を通して気付かせるとともに、水溶液中の物質の構成粒子の様子についてイメージさせ、微視的な見方ができるようにする。

2 準備

  300mLビーカー、薬さじ、ガラス棒、蒸留水、メスシリンダー、水酸化ナトリウム水溶液(1mol/L)、塩酸(1mol/L)、砂糖、炭酸飲料、エタノール、食酢、アンモニア水(1mol/L)、酢酸(0.35、0.70、1.05mol/L)
 1.05mol/L酢酸500mLを作るには蒸留水300mLに氷酢酸(17.5mol/L)を30mL加えて、500mLに希釈する。同様に、0.70mol/L、0.35mol/L酢酸は氷酢酸をそれぞれ20mL、10mLを加えて、500mLに希釈する。

 交流電灯装置

  2個の電灯(60W)と2組の同一電極を用い、その2つの電灯の様子を同時に観察することで、水溶液中のイオンの量を比較することができる。電極には炭素棒を用いて、電極間隔を2.5cmにした。また、電極には水溶液中に浸る面積が一定に保たれるように、浸る部分を下から1.0cm残し、その他の部分を絶縁テープで覆ってある。


3 方法

 (1) ビーカーに溶液を入れ準備する。
 (2) 純水とエタノール、水酸化ナトリウム水溶液と塩酸というように、順番に電極を差し替えて電灯の明るさを確認していく。
純水とエタノール
(どちらも点灯しない)
水酸化ナトリウム水溶液1mol/Lと塩酸1mol/L
(どちらの溶液も明るく点灯する)
濃い食塩水と薄い食塩水
(濃いほど明るく点灯する)
砂糖水と炭酸飲料水
(炭酸飲料水はわずかに点灯する)

 (3) 食酢中に含まれる酢酸の濃度を、濃度の異なる酢酸に電極を入れ替えていき、明るさを比較することで、おおよその濃度を調べる。
食酢と酢酸0.35mol/L
(食酢の方が明るい)
食酢と酢酸0.70mol/L
(ほぼ同じ明るさ)
食酢と酢酸1.05mol/L
(食酢の方が暗い)

 (4) 酢酸1mol/Lとアンモニア水1mol/Lの明るさを観察する。次にアンモニア水を酢酸水溶液に加えていき、その明るさの変化を観察する(動画)。

4 結果・考察

  この演示実験では、同じ電灯を用いるので、明るさについて比較しやすく、また、素早く実験を行うことができる。定量的な数値を求めることはできないが、明るさを比較することにより、溶液中の分子やイオンの様子がイメージしやすくなり、電解質や非電解質、あるいは強酸と弱酸などの理解を深めることができる。

5 留意点

 (1) 炭素電極は割れやすいので取扱いには気を付ける。
 (2) 電灯の明るさは、電極の間隔や水溶液に浸る面積によって変化するので、同一の電極を用意する。
 (3) 100Vの交流電源を用いているので、電源が入っているときに電極には触わらない。また、生徒だけでは危険なので行わせない。
 (4) 電極を入れ替える際は、電極を純水で洗ってから行う。
 (5) 水溶液はできるだけ身近なものを用いるとよい。
 (6) 濃厚なアンモニア水は皮膚を刺激し、その蒸気は有害であるので取扱いに注意し、換気をしながら実験を行う。
 (7) 氷酢酸は皮膚を刺激し、その蒸気は有害であるので取扱いに気を付ける。

6 参考文献

  『ケミカルデモンストレーション5 溶液とコロイド』 池本 勲 訳  丸善 (1998)

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