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鉄の自然発火

1 目的 

 鉄釘(てつくぎ)に火をつけようとしても、火はつかない。ところが、スチールウールのように細い繊維状にすると、火がついて赤く燃える。更に細かい粉末状にすると、空気中で自然発火する。このように状態の違いによって物質の反応性に違いが表れることを知る。ここでは、細かい粉末の鉄が空気中で自然発火することを観察する。

2 準備

[器具] 試験管,金属製の試験管立て、ゴム栓、金属製の試験管ばさみ,新聞紙、ガスバーナー
[薬品] シュウ酸鉄(U)二水和物  FeC2O4・2H2O

3 方法

(1)

シュウ酸鉄(U)二水和物 約2gを試験管に取り(写真1)、ガスバーナーの炎で直接加熱する(写真2)。

写真1 写真2

(2)

シュウ酸鉄(U)二水和物の黄色い色がだんだんと黒ずみ、全体がさらさらとした黒色の粉末になるまで加熱する(写真3)。
・このとき試験管を激しく振らないこと。(全体の色が変化するのに5分程度かかる)
・試験管上部に水滴が付着するので、試験管全体を加熱し、水滴を取り除いておくこと。
(3) 加熱終了後、直ちに試験管にゴム栓をする。試験管は相当熱くなっているのでやけどに注意すること。室温に戻るまで放冷する(写真4)。
写真3 写真4

(4)

新聞紙(2枚程度)をぬらしたものを床に敷いておく。

試験管の栓を取り、敷いておいた新聞紙の上に素早く黒色粉末を振りまき、様子を観察する。

4 結果・考察

(1) 微粉末鉄の合成
  ・超微粒子とは、粒子の直径が0.1μm以下の粒子をいう。鉄の塊を乳鉢ですりつぶして作ることはできない。
・ここでは、シュウ酸鉄(U)の熱分解によって超微粒子状の鉄を作った。260℃に加熱すると、熱分解し、鉄、酸化鉄(U)、四酸化三鉄などの混合した黒色粉末になる。
FeC2O4・2H2O → Fe + CO2 + CO +・・・・
(2) 超微粒子の性質
  ・物質は質量が同じなら、粒が小さいほど表面積が大きい。表面積が大きいと表面エネルギーが大きく、不安定になる。そこで他の粒子と結合し、安定化しようとする。そのため、空気中の酸素と一気に反応して自然発火することとなる。
・鉄粉は、瞬間的に褐色の酸化鉄(V)Fe2O3に変わる。

5 留意点

(1) シュウ酸鉄(U)二水和物は、医薬用外劇物であるので、ゴム手袋等を使用し直接手などに触れないようにする。
(2) シュウ酸鉄(U)二水和物の加熱
・方法(2)で注意してあるが、加熱中に激しく試験管を振ると、反応で生じた還元鉄が空気中の酸素と反応して酸化されてしまうので、穏やかに加熱すること。また、空気に触れにくくするため使用する試験管は、あまり太くない方がよい。
・加熱中に、水滴が試験管上部に付着するので、試験管全体を加熱して取り除いておくこと。そのままにしておくと、試験管が割れることがあるので注意。
(3) 方法(4)では、必ずぬらした新聞紙の上に振りまくこと。その場合にも新聞紙が燃えることがあるので周囲に燃えやすい物を置かないよう注意すること。

6 参考文献
 『おもしろい化学の実験』 武田一美 東洋館出版社、1992

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