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エステルは生活の中でも香料や医薬品などに利用されている大切な物質である。今回は3種類のエステル(酢酸エチル、酢酸ペンチル、サリチル酸メチル)を合成する。 |
[器具] 試験管(3本)、ビーカー(100ml、200ml)、駒込ピペット、薬さじ、ガラス棒、マッチ、金網、三脚、上皿天秤 [薬品] 氷酢酸、エタノール、ペンタノール、サリチル酸、メタノール、濃硫酸、炭酸水素ナトリウム、熱湯
3 方法
(1) 酢酸エチルの合成 ア 乾いた試験管に酢酸2mlとエタノール2mlを入れてよくかき混ぜる。これに、濃硫酸0.5mlを加え、熱湯につけておき、ときどき取り出してよく振り混ぜる。 イ 果実のような香りがするようになったら、水につけて冷やした後、水約5mlを加えよく振り混ぜる。
(2) 酢酸ペンチルの合成 ア 乾いた試験管に酢酸2mlとペンタノール2mlを入れてよくかき混ぜる。これに、濃硫酸0.5mlを加え、熱湯につけておき、ときどき取り出してよく振り混ぜる。<写真1> イ 果実のような香りがするようになったら、水につけて冷やした後、水約5mlを加えよく振り混ぜる。<写真2>
<写真1> | <写真2> |
(3) サリチル酸メチルの合成 ア 乾いた試験管に、サリチル酸1gを取り、メタノール2mlを加えてよく振る。これに、濃硫酸1mlを加えて、金網上で穏やかに加熱する。 イ サリチル酸が溶けて液が透明になり、じっくり加熱を続けると突然白濁する。さらに、1分間ほど穏やかに加熱を続ける。<写真3、動画> ウ 反応液を冷却した後、反応液を水約50mlの入ったビーカーに注ぐと油状物質が沈む。さらに、炭酸水素ナトリウムの粉末を気泡が発生しなくなるまで少しずつ加える。<写真4、5>
<写真3> | <動画> |
<写真4> | <写真5> |
(1) 酢酸エチル、酢酸ペンチルに水を加えると、エステルが上層になり、二層に分かれる。 (2) 硫酸は脱水の働きとともに、水素イオンがエステル化の触媒として働く。
(1) 濃硫酸を加えたときの発熱に注意する。 (2) 氷酢酸(99%)を使用する代わりに、無水酢酸を使用すると加熱が不要で、濃硫酸を一滴加えると激しく反応が進行する。手軽で、工業的にはこの方法が主であるが、危険度が増すため生徒実験では十分注意が必要である。 (3) サリチル酸メチルの合成においては、加熱時に突沸しないように注意する。
(1) エステルはカルボン酸とアルコールが脱水縮合してできた化合物である。
(2) 低分子量のエステルは、無色透明の液体で果実様の芳香がある。 ・酢酸エチル[CH3COOC2H5 ] 香料として果実エッセンス、果汁、リキュールなどに用いられる。 ・酢酸ペンチル(酢酸アミル)[CH3COOC5H11 ] ナシの果実フレーバーとして香料や油絵の具、ラッカーなどの溶剤に用いられる。 (3) サリチル酸メチルについて ・性質 無色の液体でチューインガム、歯ミガキ用香料として、また鎮痛用湿布薬などに用いられる。フェノール性水酸基をもつ弱酸性物質である。 ・構造式
(1) エステルの性質(芳香があること。エステルが水に不溶で、上層に存在することが確認できる。 (2) カルボキシ基が炭酸水素ナトリウムと反応する(カルボン酸が炭酸より強い酸であることがわかる)
・サリチル酸メチルの合成に関して、炭酸水素ナトリウムを利用することを考察させる。
・塩化鉄(V)水溶液を利用し、フェノール性ヒドロキシ基がサリチル酸メチルに存在することを確認する。
※次の実験プリント例を活用して実験に取り組む。 実験プリント例
この実験教材は、高等学校学習指導要領解説(理科編)におけるの項目において利用できる。
・化学U (3)生命と物質 イ 薬品の化学 (ア)医薬品
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