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写真フィルムを用いた銀鏡反応

1 目的 

 写真フィルムには感光性のある臭化銀が使われている。通常、アルデヒドの還元性を確認するには硝酸銀水溶液を用いた銀鏡反応の観察を行うが、ここでは写真フィルムを用いて銀鏡反応を観察する。

2 準備

[器具] 白黒写真フィルム、はさみ、50mLビーカー、200mLビーカー、駒込ピペット3本、試験管、ガスバーナー、三脚、金網
[薬品] 1mol/Lチオ硫酸ナトリウム水溶液、0.5mol/L 水酸化ナトリウム水溶液、3%グルコース水溶液

3 方法

 (1) 写真フィルムを50cmほど引き出し、できるだけ細かく切り、50mLビーカーに入れる(写真1)。

写真1

 (2)

チオ硫酸ナトリウム水溶液を10mL入れ、フィルムを浸し、フィルムが透き通るまで表面の臭化銀を溶かす(写真2)。

写真2
 (3) (2)の溶液5mLを試験管に取り、水酸化ナトリウム水溶液2mL、3%グルコース水溶液2mLを加える(写真3)。

写真3
 (4) 200mLビーカーで熱湯を沸かし、(3)の試験管を浸す。試験管を動かさずに放置すると3〜5分で銀が析出する(写真4、写真5)。

写真4

写真5

4 結果・考察

 (1) アルデヒドの還元性
  アルデヒドは酸化されやすく、還元性をもつ。鎖式グルコースはアルデヒド基をもつため、グルコース水溶液には還元性がある。
 (2) 銀鏡反応
臭化銀はチオ硫酸ナトリウム水溶液を加えると、次の反応により錯イオンとなって溶ける。
AgBr  +  2S2O32-  →  [Ag(S2O3)23-  +  Br- 
アルデヒドの還元性により銀イオンから単体の銀が析出する。
  R-CHO  +  2[Ag(NH3)2+  +  2OH-  →  R-COOH  +  2Ag  +  4NH3  + H2O  (銀の酸化数+1→0)
水酸化ナトリウム水溶液を加えるのは、アルカリ性にし、還元剤の酸化還元電位を低くコントロールするためであり、反応性を高めることができる。

5 留意点

 (1) 原理としてはカラーフィルムでも可能であるが、発色のための成分が反応を阻害するため、うまくいかない。
 (2) 湯せんの温度が低いと銀が析出しない。(90℃以上の湯を用いる。)

6 指導上の留意点

 この実験教材は,硝酸銀水溶液を用いた銀鏡反応実験と併せて行うとよい。
 硝酸銀水溶液を用いた銀鏡反応ほど試験管にきれいに銀が析出しないが、写真フィルムに臭化銀が使われているということの確認ができる。

7 参考文献
  『やってみよう・見てみよう 楽しい化学5分間実験』 新潟県化学を楽しむ会編

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