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ろうそくの燃焼

長さが違う2本のろうそくを用いた燃焼実験


1 導入:ろうそくとは何だろうか?

ろうそくとは,「ろう」に綿糸などでできた芯を埋め込んだもので,芯に火をつけて明かりとして用います。
 
ローソク,キャンドル(Candle)ともいいます。

ろうそくに関する著作では,マイケル・ファラデーの『ろうそくの科学』が有名です。また,光源の明るさの単位である「カンデラ」は,もともと特定のろうそくの明るさを基準として決められた単位です。

いつ頃からろうそくが使われはじめたのか不明ですが,古代エジプトでは,ミイラ作成などで古くから蜜蝋(みつろう)が使われており,2300年前のツタンカーメンの王墓からはろうそくを立てる燭台(しょくだい)が発見されています。



2 なぜろうそくは燃えるのだろうか?

ろうそくの芯にともった炎によって,周囲の「ろう」が溶けて芯にしみ込み,さらに,それが気化して燃焼します。この燃焼を助けるのが,空気中に存在する酸素です。

ろうそくは,空気中にある酸素を使って「ろう」を燃焼させます。「ろう」が燃えた後には,水と二酸化炭素が生成します。

「ろう」が燃焼して「すす」ができる様子は,ろうそくの炎にガラスを近づけると確認できます。これは,酸素の不足により「ろう」が不完全燃焼を起こし,高温で熱分解したためできると考えられます。




※ムービーファイルはWMV形式です。WMVファイルを再生できるプラクインソフトが必要です。


3 実験1:ろうそくをガラス瓶の中で燃焼させると,どうなるか?

ガラス瓶の中でろうそくを燃焼させると,

 @ ガラス瓶の中に存在する酸素が,「ろう」が燃焼することによって減少します。

 A それと同時に,「ろう」の燃焼によって生成した二酸化炭素が増加します。

ろうそくの燃焼には気体中に12〜17%の酸素が必要ですが,この実験では「ろう」の燃焼により,酸素の量がこの状態よりも徐々に少なくなります。二酸化炭素には燃焼を助ける働きがないので,酸素の減少とともに炎は小さくなり,やがて消えます。




※ムービーファイルはWMV形式です。WMVファイルを再生できるプラクインソフトが必要です。

4 実験2:長さが違う2本のろうそくをガラス瓶の中で燃焼させると,ろうそくの炎はどうなるか?

A ろうそくの炎は同時に消える

B 長い方のろうそくの炎が先に消え,その後に短い方のろうそくの炎が消える

C 短い方のろうそくの炎が先に消え,その後に長い方のろうそくの炎が消える

D 2本とも消えずに燃焼し続ける



 正解の動画はこちら・・・





※ムービーファイルはWMV形式です。WMVファイルを再生できるプラクインソフトが必要です。

5 まとめ:実験の結果について


正解  Bの長い方のろうそくの炎が先に消え,その後に短い方のろうそくの炎が消える


気体は,温められると上昇する性質があります。これは,気球の中の空気を温めると気球が上昇することにも利用されています。

この実験では,ろうそくの燃焼で生成した二酸化炭素は,ろうそくの炎(およそ900℃)で温められて上昇し,ガラス瓶の上部にたまり始めます。するとガラス瓶の上部の酸素濃度が減少し,長い方のろうそくが最初に消え,次に短い方のろうそくの炎が消えるのです。

気体の重さを0℃,1気圧の場合で考えると,空気の重さを1とすると酸素の重さは1.1,二酸化炭素の重さは1.5となり,生成した二酸化炭素が下にたまって短いろうそくの炎の方が先に消えると考えがちです。しかし,ボイル・シャルルの法則によれば「温度が上昇すると,気体は膨張する」と記されています。

例えば,それぞれの気体を,圧力(P)が一定で室温(T)の状態での酸素の体積(V)と,ろうそくの炎の温度(T)で温められた状態での二酸化炭素の体積(V)を比較してみると,

ボイル・シャルルの法則を用いて

PV/T=一定, T=273+20,T=273+900 より 

   PV/T=PV/T

   P×V/(273+20)=P×V/(273+900) 
 
圧力(P)=一定より

   V/293=V/1173
 
   1173V=293V

となり,二酸化炭素の体積(V)は,酸素の体積(V1)のおよそ4倍に膨張します。

つまり,二酸化炭素の方が膨張したために密度が減少して軽くなることがわかります。 気体の重さよりも,温度による気体の膨張の方が影響を及ぼすのです。



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