back


ラクトースオペロン
Lactose operon

1 はじめに
   大腸菌などの原核生物は転写開始の制御によって必要な遺伝子の発現を調節している。一連の代謝経路に働く複数の酵素を発現する遺伝子群は、DNA上にまとまって存在しており(このまとまりを 「オペロン」という。)、フランスのジャコブ(F.Jacob)とモノー(J.Monod)は、大腸菌において調節遺伝子を発見し、オペロン説を提唱した(1961年)。1965年にはこの業績に対して、ノーベル生理・医学賞が贈られた。

2 ラクトースオペロン

・構造遺伝子群
   (オペロン)
ラクトース分解酵素やラクトース透過酵素の合成に関する遺伝子。
・調節遺伝子 構造遺伝子群(オペロン)の発現を調節する遺伝子で、リプレッサーをつくる。
・CAP結合部位 CAPはcAMPと結合すると活性化し、RNAポリメラーゼの働きを高める。
注1) CAPはタンパク質の一種で、cAMPと結合するとアクチベーターとして働く。
注2) cAMPは大腸菌内でグルコースが欠乏すると濃度が高まる物質。
・リプレッサー オペレーターに結合し、RNAポリメラーゼがプロモーターに結合するのを阻害する。
・オペレーター リプレッサーが結合するDNAの領域。この結合により、構造遺伝子群の発現を抑制する。
・プロモーター RNAポリメラーゼが結合するDNAの領域。ここにRNAポリメラーゼが結合すると転写開始。

3 転写を制御する2つのスイッチ
(1) 第1のスイッチ・・・・CAP結合部に活性化したCAP(アクチベーター)が結合すると、スイッチ「ON」
*グルコースがない →cAMPの濃度「大」→CAP+cAMP=活性化したCAP→CAP結合部に結合
スイッチ「ON」
*グルコースがある →cAMPの濃度「小」→CAPは活性化しない→CAP結合部に結合しない
スイッチ「OFF」


(2) 第2のスイッチ・・・・オペレーターにリプレッサーが結合すると、スイッチ「OFF」
*ラクトースがない →リプレッサーが、オペレーターに結合する
→RNAポリメラーゼは、プロモーターに結合できない

スイッチ「OFF」
*ラクトースがある →リプレッサーとラクトースが結合し、リプレッサーは不活性化する
→リプレッサーが、オペレーターに結合できない
→RNAポリメラーゼは、プロモーターに結合する

スイッチ「ON」


(3) 2つのスイッチの組合せ
グルコース ラクトース ラクトースオペロンの制御

4 まとめ
   大腸菌などの原核生物は、活性化因子(アクチベーター)および抑制因子(リプレッサー)という「スイッチ」を使って転写段階で遺伝子発現を調節している。


back