back


耳かきでだ腺染色体を簡単に採取してみよう!

1 はじめに 

   だ腺染色体の観察で生徒が最も苦戦するのが「だ腺」の採取である。生徒によっては何回行ってもなかなかうまくできず、結局時間が足りなくなり自分で採取した「だ腺」を用いて染色体を観察できないまま実験が終わってしまうこともある。これでは実験に対する興味、関心が低くなってしまうことが心配される。では、その原因はいったい何であろうか。教科書ではピンセットと柄つき針を使って「だ腺」を採取するように説明されているが、この方法では慣れているはずの教師でも失敗することが結構ある。初めて行う生徒であればなおさらである。そこで、採取方法について工夫をしてみた。

2 準備    

冷凍アカムシ 生アカムシ ピンセット 耳かき(竹製、プラスチック製、使い捨てタイプ)
柄つき針 顕微鏡 スライドガラス カバーガラス
酢酸オルセイン

3 冷凍アカムシと生アカムシの比較

冷凍アカムシ       生アカムシ
     
     
メリット       メリット
  • ペットショップなどで魚の餌として売られているので、1年を通して入手することができる。
  • 値段が安価で(100g−24キューブで150円程度)、小さく小分けされているので、必要な分だけ解凍して使用できる。(1クラスに1キューブあれば十分な量が確保できる)残りは冷凍庫で保存しておくことができる。
  • 動かないので頭部を押さえやすく、だ腺の採取がしやすい。
     
  • だ腺の見分けがつきやすい。
     
デメリット       デメリット
  • 消化管等、だ腺以外の器官も透明で、だ腺の見分けがつきにくい。
     
  • ワカサギ釣りの餌として釣具店などで売られているが、ワカサギ釣りのシーズン(11中旬から2月)にならないと入手が困難である。
  • 値段が冷凍アカムシに比べて高価である。(10gで210円程度)
  • 冷蔵庫で保存しても、長く置いておくことができない。
  • 動くので頭部を押さえにくく、だ腺の採取がしにくい。

4 方法

(1) アカムシをスライドガラスに載せ、胸のあたりをピンセットで押さえ、頭を耳かきで押さえながら引き抜く。
(2) 頭部についている半透明な一対の袋状のだ腺が採取できたら、だ腺だけを残して他のものは取り除く。
(3) 酢酸オルセイン溶液を滴下して5〜10分間静置する。
(4) カバーガラスをかけ、ろ紙を載せて上からまっすぐ下に向けて親指で強く押しつぶし、顕微鏡で観察する。
(5) 最初に低倍率(150倍)で観察してだ腺染色体を探し、次に、だ腺染色体を視野の中央に移してから高倍率(600倍)にしてよく観察する。

だ腺の採取(動画)

5 結果

   柄つき針を使って採取しようとするとかなり慣れが必要であるが、耳かきを使うと初めてでも比較的簡単に採取することができる。少しの工夫で採取の成功率が高くなり、1時間の授業時間の中で余裕をもって観察を行うことができる。
   酢酸オルセインによって染まったしま模様をもつだ腺染色体が観察できるが、アカムシのだ腺染色体は押しつぶし法でプレパラートを作成すると、染色体が広がりにくく、1カ所にまとまって存在することが多いので、黄色ショウジョウバエのだ腺染色体と比べて染色体数が分かりにくい。
冷凍アカムシのだ腺 生アカムシのだ腺


だ腺染色体の顕微鏡写真
×70 ×150
×280 ×600

6 留意点

 アカムシの頭部をうまく引き抜くことができたとしても、だ腺以外の部分もあり、だ腺そのものも小さいので、観察するためには十分注意する必要がある。
 だ腺は対をなしており半透明である。形は三角形または矢じり形をしている。また、水を滴下した状態で見ると半透明のだ腺がよく分かる。以上のことを参考にして見分けるとよい。
 染色しただ腺にカバーガラスをかけ、ろ紙を載せて押しつぶすとき、カバーガラスを横にすべらせてしまうと染色体がきれいに観察できなくなるので、親指で上からまっすぐ下に向けて強く押しつぶすようにする。

参考

耳かきの材質(竹製、プラスチック製、使い捨てタイプ)の違いについての比較
  • 冷凍アカムシを使用する場合は竹製でもプラスチック製でもあまり差はなかったが、生アカムシを使用する場合はプラスチック製では滑りやすく、頭部を押さえるのが難しかった。
  • 使い捨てタイプは耳かきの部分が厚く、アカムシの頭部をうまく押さえることができなかった。


back