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生物体を構成する物質のうち,タンパク質や核酸など窒素を含むものを有機窒素化合物という。動物の死骸などに含まれる有機窒素化合物は,土中で細菌などによりアンモニウムイオンに分解される。アンモニウムイオンは硝化細菌(亜硝酸菌,硝酸菌)の硝化作用により亜硝酸イオン→硝酸イオンとなり,植物体に吸収される。
吸収された硝酸イオンは根や葉で再び亜硝酸イオン→アンモニウムイオンにまで還元されたのち,各種有機酸と結合し,アミノ酸をはじめとする有機窒素化合物に同化される(窒素同化)。
植物体内に取り込まれた硝酸イオンが実際に亜硝酸イオンに還元されていることを指示薬を用いて確認する。
身近にある植物の葉(今回はツバキの葉を用いる),1%KNO3,水質検査用パックテスト(亜硝酸イオン),ハサミまたはカミソリ,はかり,温度計,恒温槽または30℃のお湯,駒込ピペット,試験管,ビーカー
(1) 試験管を用意し,試験管A,B,Cに1%KNO3を10mL,試験管Dに同量の蒸留水を加える(図1)。
図1 試験管A,B,C,D |
(2) 直前に採取した植物の葉(図2)を,約5mm四方の大きさに細かく切る(図3)。
図2 ツバキの葉 | 図3 細かくしたもの |
(3) 細かく切った植物の葉を試験管A,Dに1g,試験管Bに0.2g加えて30℃の恒温槽(暗所)に放置する(図4)。
30分経過後,試験管内の液をビーカーに移す(図5)。
図4 試験管に入れた状態 | 図5 ビーカーに移した後 |
(4) 水質検査用パックテスト(亜硝酸イオン)により,亜硝酸イオンのおおよその濃度を測定する。
〈パックテストの方法〉
@ 本体に挿してあるピンを引き抜く。
A チューブの中の空気を,指で押して追い出す。
B 溶液をチューブの半分程度吸込む。
C 指定の時間になったらパックテストに付属の標準色と比較して色の変化から濃度を測定する。
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図6 検査の様子(動画) |
パックテストの結果,試験管Aと試験管Bを比較すると,試験管AがBよりも赤色の発色が強く,高濃度の亜硝酸が存在することが示された。また試験管CとDでは亜硝酸の存在は認められなかった。(図8)
また,パックテストに付属する標準色と比較すると,以下のような結果となった。(表1)
試験管A 標準色0.1mg/Lと0.2mg/Lの間(図9)
試験管B 標準色0.05mg/Lと0.1mg/Lの間(図10)
試験管C 赤色の発色なし(図11)
試験管D 赤色の発色なし(図12)
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図7 発色の様子(動画:8倍速) |
表1
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図8 発色の比較子 |
図9 試験管A(1%KNO3+葉1g) ※0.1g/Lと0.2g/Lの中間の発色を示した |
図10 試験管B(1%KNO3+葉0.2g) ※0.05g/Lと0.1g/Lの中間の発色を示した |
図11 試験管C(1%KNO3のみ) ※赤色の発色なし |
図12 試験管D(蒸留水+葉1g) ※赤色の発色なし |
暗所に置いた場合と,明所に置いた場合を比較すると,暗所に置いた方が亜硝酸イオン濃度が高い傾向が見られた。これは,明所では,光により亜硝酸イオン→アンモニウムイオンの反応が進み,亜硝酸イオンとして残る量が少ないからであると考えられる。
(1) 採取して数日経過した葉では,亜硝酸イオンの濃度が低く,発色が弱くなるので,できるだけ測定の直前に採取した方がよい。
(2) 植物の種類によって比較してみるとよいが,種によって(特に葉の柔らかいもの)は葉の色素が溶出してしまい,色の変化が分かりにくくなることがあるので注意する。
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