光合成の定性的実験(オオカナダモ、BTBの使用)
1 目 的
植物がおこなう光合成は、光の強さ・波長、温度、二酸化炭素濃度に影響を受ける。ここでは、光の有無・波長、温度が光合成に影響していることを簡単に確認することを目的とした。光合成がおこなわれたかどうかは、BTB溶液の色の変化により判定する。植物(オオカナダモ)の光合成により水中の二酸化炭素を消費することによって、溶液のpHが高くなることを利用する。
2 準 備
(1) 材 料
オオカナダモ(実験実施の半日前から暗所に置いておくと光合成量はより大きくなる。)
(2) 器 具
三角フラスコ(100mL)、ゴム栓、ビーカ、試験管、セロファン(青色、緑色、赤色)、アルミホイル、温度計、照度計
(3) 薬 品
BTB(ブロムチモルブルー)溶液(使用時は20倍に希釈)
0.1%BTB指示薬の色の変化
酸 性 |
弱酸性 |
中 性 |
弱アルカリ性 |
アルカリ性 |
黄 色 |
黄緑色 |
緑 色 |
緑青色 |
青 色 |
3 実験手順
(1) 実験1 (光の有無による影響を調べる実験)
(ア) 2個のフラスコに、ほぼ同量のオオカナダモ(軸長で20cm)を入れる。
(イ) 調整したBTB溶液を両フラスコに同量ずつ、藻体が隠れるように注ぎ込み、ゴム栓をする。
(ウ) 三角フラスコの一方をアルミホイルで覆い、他方は直射日光の当たる窓際に置き、約20分間放置する。
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ビーカ(左)無処理のBTB溶液 |
ビーカ(中)直射日光を照射 |
ビーカ(右)アルミ箔を巻いた |
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(2) 実験2 (温度の影響を調べる実験)
(ア) 2個のフラスコに、ほぼ同量のオオカナダモ(軸長で20cm)を入れる。
(イ) 調整したBTB溶液を両フラスコに同量ずつ、藻体が隠れるように注ぎ込み、ゴム栓をする。
(ウ) 三角フラスコの一方を氷水(水温0℃)の中に浸した状態で、他方は水温約25℃に保ち、両フラスコを直射日光の当たる窓際に置き、約20分間放置する。
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ビーカ(左)無処理のBTB溶液 |
ビーカ(中)25℃で直射日光を照射 |
ビーカ(右)氷水中で直射日光を照射 |
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(3) 実験3 (光の波長の影響を調べる実験)
(ア) 3本の試験管にそれぞれ青色(2重)、緑色(1重)、赤色(1重)のセロファンを巻く。
(イ) (ア)の3本の試験管と何も巻かない試験管に、ほぼ同量のオオカナダモ(軸長で15cm)を入れる。
(ウ) 調整したBTB溶液を同量ずつ、藻体が隠れるように注ぎ込む。
(エ) 試験管を直射日光の当たる窓際に置き、約20分間放置する。
左から |
試験管1 無処理のBTB溶液 |
試験管2 直射日光を照射 |
試験管3 青色セロファン |
試験管4 緑色セロファン |
試験管5 赤色セロファン |
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注: 試験管内の照度が同じになるように、あらかじめ照度計を用いて各色のセロファンを光が透過すると、どれくらい減光するかを調べておく。 |
4 参考資料
(1) 実験1より、光がないと光合成が進まないことがわかる。
(2) 実験2より、0℃の状態でも二酸化炭素の取り込みがあったことから、低温でも光が当たればわずかずつではあるが光合成が行われていると考えられる。これは冬期の低温状態でも生命活動を営んでいることを示している。
(3) 実験3より、光合成に有効な光は青色光と赤色光であることを示している。これは植物が持っている同化色素の中で最も多いクロロフィルaの吸収する光が、青紫光と赤色光であることと一致する。緑色のセロファンを巻いた試験管でも二酸化炭素の消費があったのは、植物が持っているカロテノイド系の補助色素によって緑色光が利用されたものと考えられる。
(4) 各実験において条件がなるべく同じになるよう、藻体量(軸長、重量)、藻体の位置(先端部・中央部・基部)をそろえる。
(5) これらの実験の発展課題として、試験管にペーパータオルなどを巻くことによって光の強さを段階的に変化させて、その影響を調べることもできる。温度についても同様である。
5 参考文献
渡辺義一:学校理科薬品の利用と管理 黎明書房(1976)
愛知県理科教育研究会編:すぐに役立つ生物教師実験(1987)
数研出版:生物実験ノート(1988)