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アサリの水質浄化作用の観察
1 目的
干潟や河口では、動植物の遺体や排出物由来の有機物や動物プランクトンを含んだ海水を貝類が取り入れた後、ろ過してはき出すことにより、水中の栄養塩類や有機物を浄化する。アサリを用いて実際に海水が浄化される様子を観察する。 |
2 準備
生きているアサリ(10個体程度)、人工海水、小形の水槽(5L)2個、エアレーション装置、牛乳6mL、デジタルカメラ |
3 方法
(1) | 2個の水槽それぞれに人工海水4Lずつを加え、じゅうぶんにエアレーションを行う。 | ||
(2) | 一方の水槽にアサリを10個体入れ、もう一方の水槽はアサリ以外の条件を同じにしておく。 | ||
(3) | それぞれの水槽に3mLずつ牛乳を加える | ||
(4) | 60分間隔で水槽の濁りぐあいをデジタルカメラで記録する。 |
4 結果
0時間(開始直後) | 3時間後 | ||
6時間後 | 10時間後 | ||
15時間後 | 22時間後 | ||
5 探究的な活動での活用例
この観察によりアサリの水質浄化作用を確認した後に次のような探究的な取組を行うことで、この浄化作用の効果についてさらに学習を深めることができる。
(1) 浄化作用の効果をさまざまな視点から考える。
例1:水温
例2:他の貝類
(2) 仮説の設定
例1:アサリが盛んに活動している時期(潮干狩りシーズンの5月頃)が最も浄化作用が高い。
例2:アサリよりも浄化作用の高い貝類が存在する。
(3) 実験
例1:温度だけが異なる水槽を用意し、実験を行う。
例2:シジミ、バカガイ、マテガイなどを用意し、実験を行う。
(4) 検証
また、このアサリなどの貝類のもつ浄化作用を通して、生態系における次のような干潟の役割を生徒間で議論させることもできる。
<干潟の役割(例)>
@ 生息する生物種が多様である。また、稚魚や幼魚の生息場所として重要である。
A 貝類やゴカイ等の有機物を分解する生物が多く生息している。このことにより、川の上流から流れてきた有機物を分解することで、それが大量に海に流れ出て、濃度が急激に上昇することを防いでいる。
B 高潮、津波等が陸地に到着する際に、そのエネルギーを減少させる。
C 渡り鳥の生息地のためバードウォッチングの場として利用されている。また、潮干狩り等のレジャーを通じて自然環境を身近に感じるための場や、学校・地域等における環境学習の場として活用できる。
6 留意点
(1) | 弱っていたり、死んだりしているアサリは水質を悪化させるので除いておく。 | |
(2) | 海水と同濃度の食塩水でも観察可能であるがアサリが弱りやすいので注意する。 | |
(3) | アサリを水槽に入れる前にエアレーションが不十分だと、アサリが弱ったり死にやすいので時間をかけてエアレーションしておく。 | |
(4) | アサリが水槽に多すぎると、24時間の間に死んでしまう個体もあるので入れすぎないよう注意する。 | |
(5) | 条件が合わず、アサリが死ぬと急速に水質が悪化するため、何度か実験を行う場合は適当な条件を記録しておく。 | |
(6) | 動物に触れたあとは必ず手を洗う。 |
7 参考文献
生物基礎 東京書籍(教科書) |
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