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魚類の血球類の観察

1 はじめに

   硬骨魚類では、血液量は体重1kgあたりでは約60mLlである。血液の機能は、(1)栄養素、酸素と二酸化炭素、ホルモンや代謝産物の運搬機能、(2)体内の酸・塩基平衡の維持、(3)体液量の維持、(4)生体防御作用、(5)止血作用など多くの機能がある。特に脊椎動物では、魚類・両生類・は虫類・鳥類においては、赤血球中に核が存在するが、ほ乳類の赤血球には核は存在しない。今回は魚類(ニジマス)とヒトを用いて血液組成の中で有形成分である各種血球類についての観察を行う。

2 準備

   ニジマス(15〜20cm)、注射器(2.5mL用)、針(25G)、抗血液凝固剤(ヘパリンナトリウム)、麻酔剤(安息香酸メチル)、ギムザ染色液(水道水で20倍に希釈)、スライドガラス、カバーガラス、パスツールピペット、バイアル瓶、メタノール、ドライヤー
   
   この実験では、ニジマスを用いたが、フナ・コイ等の魚を用いても可能である。しかし、20cmほどの大きさがないと、注射針を指す作業の難度が増す。死んでしまった魚では、すでに血液凝固が起こっているので実験が成り立たないので、生きている魚を用いる。

3 方法

(1)    ニジマスの麻酔
   魚類などの冷血動物用の麻酔として、安息香酸メチルを用いる。実験魚を入れた容器に麻酔剤を少しずつ入れて様子を見る。数分で魚体が横になれば麻酔が効いている。麻酔剤の濃度が濃い場合、魚が死亡するので注意する必要がある。
(2)    注射針のヘパリン処理
   動画1のように注射器でヘパリンを1mL吸い取り、また元のヘパリン容器にもどす。注射器の先端部にヘパリンが微量残っていれば、今回の実験で採血する1mLの血液に対して、十分な血液凝固作用を示す。
動画1
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(3)    採血
   写真1・2および動画2のように腹側尻鰭後部から針を刺し、背骨にあたる所まで注意深く射し込む。うまくいくと少しピストンを引くだけで血液が自然に注射器に入ってくる。無理に引くと溶血してしまうので血球観察には使えない。採血できたら、よく混合し注射針をはずして血液をそっと別のバイアル瓶にうつす。
写真1 写真2
動画2
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(4)    血液塗沫標本の作成
   採取した血液の少量をパスツールピペットでスライドガラスの一端に置く。このとき、血液の量が多いと血球同士が重なりあって観察できなくなるので注意する。動画3のようにカバーガラスを斜めにして血液に近づけ、表面張力で血液がカバーガラス全体に広がったら一定の速さで血液をスライドガラス一面に引き延ばす。
動画3
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(5)    固定
   写真3のようにドライヤーで乾燥させた後、メタノールで5分ほど固定する。
写真3
(6)    染色
   写真4・5のようにギムザ液で20分染色する。
写真4 写真5
(7)    水洗いして、乾燥させた後、1000倍で観察する。

4 結果

魚類の血球類 ヒトの血球類
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   魚類の赤血球には核が存在しますが、人をはじめとするほ乳類の赤血球に核は存在しません。動画の中で現れる核を持った細胞は白血球の好塩基球や単球です。ヒトの血球数は、赤血球が男性で1oあたり500万個、女性で450万個です。白血球は6千個から8千個です。魚類では赤血球が1oあたり300万個、白血球はおよそ3万個です。動画を見ると、ヒトと同様にその数の違いが一目瞭然です。

5 その他

ニジマスの解剖
肛門からえら側にはさみで切っていきます。
肛門から背中側にはさみを入れて体側の部分を切り取ります。
内蔵の様子です。茶色の部分は肝臓です。
うきぶくろです。長細いソーセージのような形をしています。
内臓を取り出します。
内臓はまとめて取り出すことができます。
取り出した内臓の様子です。
背骨にそって見える茶色の部分が腎臓です。
えらです。
えらの下には心臓が見えます。
えらは4枚観察されます。
茶色の棒状をした腎臓を取り出します。
腎臓の部分を切り出しました。
腎臓です。
4枚のえらと肝臓と腎臓です。
解剖の様子(動画)
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