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試行錯誤学習(2)−自分の学習曲線を描く

1 目的
   動物の習得的行動(試行錯誤学習)を自分自身が被験者になることによって調べ,学習曲線を描く。また,課題の種類や難易によっても学習効果(学習曲線)が異なることを体感する。

2 準備
   迷路(複雑な迷路,星型の迷路),ストップウォッチ(WEBフリーソフトを活用),手鏡(できれば四角いものがよい),グラフ用紙


実験用迷路(左:複雑な迷路の例,右:鏡像を用いる星形の迷路の例)

3 方法
  (1) 準備(ルールの説明…迷路の用紙配布前に生徒に説明する)
    @ できるだけ仕切りの線に触れないように取り組む。
    A 間違ったら戻ってもよいが,筆跡は消さない。
    B ゴールした直後に時計を確認し,所要時間を記録する。
    C ゴール後は迷路を隠してリラックスして待つ。 ※迷路の予復習をしない。
    D 下記のようなことを考えず,ひたすらに取り組む。
      (例:ゴールから逆にたどる,以前の試行の筆跡を参考にする等→×)

  (2) 【実験1】複雑な迷路
    @ 用紙を配布し,ストップウォッチを準備する。
    A 「用意,はじめ」の合図で取り組ませ,同時にストップウォッチも計時を始める。
    B それぞれの終了したタイミングで,時計を確認させる。
    C 終わらない生徒がいる場合は,5分を限度に切り上げさせる(記録は5分以上とする)。
    D 疲れが影響しないように,適宜時間を空けながら6回試行を繰り返す。

  (3) 【実験2】鏡を用いた迷路
    @ 用紙に手鏡を垂直に立てて,鏡の像だけを見るようにする。
    A 「用意,はじめ」の合図で取り組ませ,同時にストップウォッチも計時を始める。
    B 特に,線の外側(内側)へはみ出さないように注意させる。
    C それぞれの終了したタイミングで時計を確認させる。
    D 疲れが影響しないように,適宜時間を空けながら6回試行を繰り返す。

  実験の取組みの様子
  【実験2】
  1回目(66秒)  6回目(31秒)


注)ムービーファイルはWMV形式です。WMVファイルを再生できるプラクインソフトが必要です。


4 結果

 (1) 【実験1】複雑な迷路 (典型的な結果の得られた4人のデータを掲載)

所要時間
(秒)
 1回目 2回目  3回目  4回目  5回目  6回目 
生徒A 180  48  30  27  26  25 
生徒B 138  67  45  32  26  27 
生徒C 129  28  21  21  18  16 
生徒D 143  23  21  21  20  15 

 多くの生徒で1回目と2回目の間に大きな差があり,学習曲線は初期の傾きが大きく,比較的早い段階で一定の値に落ち着く形状となる場合が多かった。

生徒A 生徒B
生徒C  生徒D

 (2) 【実験2】鏡を用いた迷路 (【実験1】と同じ4名のデータを掲載)

所要時間
(秒)
 1回目 2回目  3回目  4回目  5回目  6回目 
生徒A 36 35 30 22 20 19
生徒B 87 52 46 38 32 30
生徒C 85 83 58 49 43 40
生徒D 70 52 45 40 33 29

 試行を繰り返すうちに所要時間が短くなる点では【実験1】と同じであるが,1〜2回目間の差よりも2〜3回目,3〜4回目の差の方が大きく出る生徒が多かった。
 そのため,【実験1】に比べると学習曲線はなだらかになる。また,6回の試行では一定の値に落ち着くには至らない生徒も多くいた。

生徒A  生徒B

生徒C  生徒D

 (3) クラス全体(被験者24名)の平均値データ

平均所要時間(秒) 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目
 【実験1】複雑な迷路 128.2 58.9 41.75 38 28.55 24.9
 【実験2】鏡を用いた迷路 56.95 44.75 40.55 34.7 28.85 29.65

クラス全体を見ても,【実験1】の学習曲線の方が【実験2】と比較して,初期の段階で傾きが大きくなる傾向が見られた。

    


5 指導上の留意点
 ここで取り上げた4名の生徒のデータは典型的な学習曲線に最も近いものであるが,多くの生徒で同様のグラフが描けるデータが得られた。中には,4回目以降で時間がかかったケースもあり,それらを生徒個々に考察させると,「直前に集中していなくて調子が出なかった」「他のことが気になって集中できなかった」などの意見が出た。
 また,迷路としては単純であるが,鏡像を用いる【実験2】の学習曲線が【実験1】に比べて緩やかである理由として,鏡越しにものを書く習慣がないため,慣れる(学習が成り立つ)までに時間がかかるためではないか,という考察もあった。

 教材としては容易に一定の傾向にあるグラフを得られる実験であると考えられる。しかし,クレペリン検査のように単純な作業を黙々と繰り返す試行となるため,試行と試行の間には適度に休憩を入れ,ストレスによる緊張をほぐす必要性を感じた。被験者に大きな負荷をかけた状態で同様の実験を行うと,被験者自身が嫌になって,それがデータに現れる可能性も十分にあると考えられる。そのため,実験時は極力リラックスした状態を基本とし,緊張が高まらないような環境をつくる必要性を感じた。

6 参考文献,利用ソフト
 高等学校生物実習書(大阪府高等学校教育研究会)
 ストップウォッチWEBフリーソフト−大きいストップウォッチ(http://stopwatchtimer.yokochou.com/largestopwatch.html)



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