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植物では、おしべのやくで形成された花粉は、めしべの柱頭につくと花粉管を伸ばして精細胞を胚のう内へ導いている。めしべ内で花粉管を伸ばすようすを観察するのは困難であるが、花粉はめしべと似た環境をもつ培地上でも発芽し、花粉管を伸ばす。そこで、アフリカホウセンカを用いて花粉管の伸長の様子を観察する。
アフリカホウセンカの鉢植え |
実験に適した時期の花 |
花粉管の観察には時期が遅い花 |
(1) 寒天培地を作る。
10%スクロース、1%寒天となるように調整する。
温めて寒天を溶かし、駒込ピペットでスライドガラスに薄くたらして固める。(2) カバーガラスの端を、アフリカホウセンカのおしべに軽く触れたあと、培地に軽く触れる。 (3) カバーガラスをかけずに、顕微鏡で観察する。
(1) 花粉管が伸長した様子(デジタルカメラで撮影した静止画)
(2) 花粉管の伸長の様子
(デジタルビデオで撮影した約15分間の動画映像を10倍速で再生)
(1) アフリカホウセンカについて 花粉管の伸長が速く、1時間の授業で実験を行うことができるため、材料として適している。温室内では1年中開花するが、園芸店では秋から冬は販売されていない場合があるので注意が必要である。(2) 培地の作成について 培地が乾くと発芽率が下がるため、観察直前(授業時間内)にスライドガラス上に培地をたらして固めるとよい。
寒天を溶かす場合、湯煎でもよいが、電子レンジを使うと便利である。この際、途中で1〜2度取り出してガラス棒で混ぜると吹きこぼれを防ぐことができる。(3) 花粉のまき方について 花粉が密集していると観察しにくいため、ほんの少し花粉がつく程度に、カバーガラスの端をおしべに軽く触れたあと、スライドガラスに軽く触れることが大切である。スライドガラス上で花粉を振り落とす方法もあるが、花粉以外のものも落ち、観察がしにくいため、カバーガラスを用いた方法を薦める。
ビデオカメラを、顕微鏡の接眼レンズに合わせて、三脚で固定し撮影を行う。
顕微鏡の倍率を低倍率(100〜150倍)とし、ビデオのズーム機能を用いて拡大した方が、うまく撮影できる。
アフリカホウセンカの花粉は、培地にまいた後、数分で発芽を始め、花粉管の伸長速度も速い。生徒はみるみる伸長する花粉管の様子に「すごい」「生きているみたい」と発言し、感動を示した。
ただし、顕微鏡を見続けると目が疲れてくる。そのため、同時に動画映像を見せて観察させると、花粉管の伸長の様子を正しく理解し、生徒にとっては分かりやすく効果的であると思われる。
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