back |
血液凝固の実験
1 目的
ケガなどで出血したときは、血液は凝固反応のシステム(モラビッツの説 図1)がはたらき、速やかにカサブタができて止血する。しかし、血液は血管中を流れているときに凝固すれば、血栓となり脳梗塞や心筋梗塞など重篤な病状に陥る。ここでは、哺乳類(ブタ)の血液を用いて、血液凝固のしくみの理解を深める。
2 準備
(1) 材料 ブタの血液(クエン酸ナトリウム処理)
入手:予め3.13%クエン酸ナトリウム溶液を試薬瓶に入れておき、屠蓄場でその中に採取した血液を入れてもらう。(クエン酸ナトリウム溶液:血液=1:9)
(2) 器具 試験管(No.1〜5)5本、試験管立て、ビーカー(300mL用)2個(100mL用)1個、ピペット数本、ガラス棒1本、温度計1本、メスシリンダー(用)1本、シャーレ1個、遠心分離用器具一式
(3) 試薬等 3.13%クエン酸ナトリウム溶液50mL〜100mL、0.025MCaCl2溶液、純水(洗浄ビンに入れる)、氷
3 実験手順
(1) 試験管No.1〜No.4にクエン酸ナトリウム処理血液を3mLずつとる。
(2) No.1の試験管はそのまま37℃に保ったビーカーに入れる。
(3) No.2〜No.4の試験管に0.025MCaCl2溶液を3mLずつ加え、よく振とうする。その後、以下の条件で5分後に結果を観察する。
No.2は、そのまま37℃のビーカーに入れる。
No.3は、氷水の入ったビーカーに入れる。
No.4は、37℃のビーカーに入れ、ガラス棒で試験管を円を描くように、5分間攪拌する。
No.1、2、4の試験管 | No.3の試験管 |
(4) クエン酸ナトリウム処理血液を遠心分離3000rpmで(10分間)して得た血しょう1mLを100mL用ビーカーに取り、純水9mLを加え10倍に薄める。
この希釈した血しょう3mLをNo.5の試験管に取り、さらにCaCl2溶液を3mLを加える。
4 結果
試験管1および3については、血液の凝固はみられなかった。残りの試験管の結果は下記の写真で示す。
No.2 | No.4 | No.5 | ||||
実験結果 | 試験管にできた血餅 | |||||
4 参考資料
Q1 採取したブタの血液をクエン酸ナトリウム溶液で処理するのはなぜでしょう。
A1 血液の凝固を防止するためです。
血液中に遊離しているCa2+はクエン酸カルシウムとなり、除去され、凝固が進行しません。
Q2 各試験管にCaCl2溶液を加えたのはなぜでしょう。
A2 Ca2+を加え、凝固の反応を進行させるためです。
Q3 No.3の試験管(氷水中に入れた)の血液はなぜ凝固しなかったのでしょう。
A3 低温では、トロンビン等の酵素のはたらきが抑えられ、凝固の反応が進行しないためです。
Q4 No.4の試験管で得られた、ガラス棒に付着したものは何でしょう。また、残った血液が凝固しなかったのはなぜでしょう。
A4 フィブリンです。ガラス棒でフィブリンを除去したため、血球をからめることができず、血餅ができないからです。
Q5 血餅をつくるフィブリンは血液中のどこに、どのように存在していたのでしょう。
A5 No.5の結果より血しょう成分中にフィブリノーゲン(繊維素原)として存在ています。
5 参考文献
愛知県理科教育研究会編:すぐに役立つ生物教師実験(1987)
back |