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1 はじめに
ヒトは刺激を受けると瞬間的に反応しているように感じている。しかし,実際には受容器で受容した刺激は,感覚神経を経て感覚中枢に送られ,そこで刺激が知覚される。そして運動中枢から命令が出され,これが運動神経を経て効果器に伝えられ反応が起こっているのである。 そこで,耳で刺激を受容してから手で落下する物差しを挟むという反応が起こるまでの時間を,物差しの落下距離を自由落下の公式に当てはめることによって求め,測定した。 |
2 準備
◎ | 器具 |
厚紙,物差し,スタンド |
3 方法
(1) | 実験準備 | ||
ア | 厚紙の中央に物差しが通過できる程度の長方形の穴を開ける(厚紙の面を基準面とする)。 | ||
イ | 写真1のように厚紙をスタンドに取り付ける。また,厚紙の下で,落下してくる物差しを親指と人差し指で挟む準備をする。 |
(2) | 物差しの落下距離の計測方法 | |
写真1の厚紙上面を計測の原点(0m)とし,写真2の厚紙上面で物差しの目盛りを読み落下距離とする(落下距離の記録はcmではなくmで行う。写真2の場合,落下距離は0.214mとなる)。 |
(3) | 実験 | ||
ア | 被験者は目隠しを付ける。物差しを落とす生徒は「はい」という声を出すと同時に物差しを落下させる。 | ||
イ | 被験者は「はい」という声が聞こえたら直ちに親指と人差し指で物差しを挟み,写真2のように物差しの落下を止める。 | ||
ウ | この実験を5回行って,物差しの平均の落下距離(m)を求める。 | ||
エ | 落下距離(m)を,自由落下の公式に代入する。 このことで,物差しが落下を始めたことを耳で受容してから,親指と人差し指で物差しを挟んで落下を止めるまでにかかった時間(s)を求めることができる。この時間を刺激の受容から反応までの時間とする。 |
写真 1 |
写真 2 |
「刺激の受容と反応」 実験の様子 | |||||
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4 結果
表計算ソフトのシートのダウンロード (hyou.xls) (クリックした後,任意の場所にファイルを保存してください) |
5 おわりに
この実験は,刺激の受容と反応についての理解を,受容器で刺激を受容してから効果器で反応が起こるまでの時間を測定することを通して深めることを目的とした。 落下距離を測定するだけでは,具体的に受容器で刺激を受容してから効果器で反応が起こるまでにどのくらいの時間がかかるか分からないため,得られたデータを自由落下の公式に当てはめて反応時間がすぐに分かるように工夫した。結果の表は表計算ソフトを使用し,関数の利用によって平均の列のセルには1回〜5回の平均落下距離を,また時間の列のセルには物差しの落下距離から反応時間を自動的に求めることができる。 生徒は,自分のデータを入力すると直ちに反応時間が示されることを喜んでいた。その点で,生徒の興味・関心を引くことができた。この興味・関心の高まりが,刺激の受容と反応についての理解を深めために効果的であったと考える。 |
6 参考文献
生物実験・観察ノート 2008年版 宮崎県高等学校教育研究会理科部会−生物部会発行(2008年4月10日) |
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