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ニワトリの発生

1 目的

   ニワトリの卵は21日でふ化をする。その発生途中における胚膜の様子や、羊水中の胚を観察することにより乾燥や温度変化の激しい陸上への適応の様子を理解させる。さらに、命の尊さについても理解させる。

2 方法

   有精卵(種鷄場から購入:白色レグホーン約10円/個・名古屋コーチン約25円/個)、恒温器(ふ卵器)、卵パック(恒温器内での卵の配置および観察時の卵の設置台に利用)、ピンセット、糸のこぎり、ビーカー(300mL)、ラップ

3 方法

      (1) 恒温器(ふ卵器)をセットする

   恒温器を37℃にセットする。ビーカー(300mL)に水を入れ恒温器内に設置する。実験を始める1日前にはセットして、恒温器内の温度・湿度を安定させておく。

      (2) 恒温器に有精卵を置く

   卵パックを恒温器内に置き、有精卵の鈍端(卵の尖っていない側・気室のある側)が上側にくるようにし、やや斜めに傾けた状態で卵パックの上にセットする。

      (3) 転卵をする

   1日3回転卵をし、同じ位置が卵の上側にこないよう傾き具合を変化させる。その際、恒温器内の温度が下がりすぎないように転卵の作業を速やかに行う。ビーカー内の水が不足していれば補充しておく。

      (4) 14日目の胚を観察する

      (5)発生の継続

   スケッチを終えたら卵にラップをかぶせ、恒温器内に戻し発生を継続させる。雑菌が入ってしまうため、多くの卵は途中で死んでしまうが、5%程度の確率で発生を継続させることができる。


4 結果
胚の観察(14日目)
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   ニワトリの胚の主な窒素排出物を調べてみると、アンモニア(魚類段階)⇒尿素(両生類段階)⇒尿酸(鳥類段階)へと変化していく。アンモニア排出が発生開始から5日目まで、尿素排出が6日目から8日目、9日目以降が尿酸排出となる。この変化は、浸透圧の変化が卵殻内での発生に影響を及ぼさないための適応であるが、生物発生原則の事例とされている。



   生物発生原則(反復説)

   ヘッケルが唱えた「個体発生は系統発生を繰り返す」という説。発生初期の胚は、基本的に共通の形をしており、発生が進むにつれて分化して、各動物の特徴が現れてくる。


5 参考
発生の様子(6日目〜11日目)
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   陸上に卵を産む鳥類やは虫類などは、発生の過程で胚膜が形成され、胚を乾燥や急激な温度変化から守っている。ほ乳類では、尿のうとしょう膜が合わさり、外側の子宮内膜とともに胎盤を形成する。左の映像を見ると、羊膜の中は羊水で満たされており、その中で胚がゆっくりではあるが大きな運動をし、日々成長している様子を観察することができる。
胚膜 はたらき 起源
しょう膜 胚の周囲を包み、胚を保護する。 外胚葉+中胚葉
羊膜 内側に羊水を満たして胚を浸す。 外胚葉+中胚葉
尿のう 胚の排出物を蓄える。しょう膜と合わさって血管を発達させ、ガス交換を行う。 中胚葉+内胚葉
卵黄のう 卵黄を包み、血管が発達して胚へ養分を供給する。 中胚葉+内胚葉
ふ化の様子(21日目)
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   ニワトリの卵は発生を開始して約21日でふ化をする。ニワトリの発生とともに、卵殻のカルシウムが取り込まれて胚の骨の形成に用いられる。ヒヨコの骨のカルシウムは約80%が卵殻に由来する。左の映像では、くちばしが卵殻を突き破ってから、ヒヨコがふ化するまでに約2時間を要した。


6 まとめ

   羊水中の胚の様子を見ていると、胚膜の構造はもちろんであるが、我々の祖先が水中で生活していたんだという進化の名残を実感することができる。さらに、この実験では、手のひらに伝わる卵のぬくもりからニワトリの命が伝わってくる。実験を通して、命の尊さ・神秘さを感じてもらいたい。


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