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骨組織(硬骨組織・軟骨組織)の観察

1 目的

  動物の組織は、上皮組織、結合組織、筋肉組織、神経組織の4つに大別される。ここでは、肉屋等で簡単に手に入るニワトリの手羽を材料に用いた観察実験法を紹介する。

2 準備

 (1)  材料
    ニワトリの手羽(肉屋等で購入できるものでよい)
 
 (2)  器具
 顕微鏡、スライドガラス、カバ−ガラス、小型のこぎり(小刀)、時計皿、安全カミソリの刃、ビ−カ−、炎色反応用具一式(白金線、バ−ナ−)
 
 (3)  薬品
 食酢、メチレンブルー水溶液(約0.1%)、Ca2+を含んだ水溶液(CaCl、Ca(OH)等の水溶液)、飽和シュウ酸水溶液


3 実験手順

 (1)  軟骨の観察実験
  ア ニワトリの手羽から皮と筋肉を取り除いて骨だけにする。
  イ 骨の関節部にある軟骨を安全カミソリの刃で薄い切片にして水を入れた時計皿に浸しておく。
  ウ 簿く切れた切片をスライドガラスにのせ、メチレンブルー液で染色し、カバーガラスをかけて検鏡し、スケッチする。

 (2)  硬骨の観察
 ア 「(1)軟骨の観察」で残った骨を小型のこぎり(小刀)で3〜4cmに切断し、食酢を入れたビーカーに3日間ほど浸しておく。
 イ 硬骨の石灰質(カルシウム塩)が溶出し、安全カミソリの刃で切れる程に柔らかくなっていたら、水でよく洗う。このとき、切るのが困難なほど柔らかくならないように注意する。(あまり長く浸しておくと切りにくくなる。)
 ウ 硬骨の切断部を、安全カミソリの刃で簿い切片にし、水を入れた時計皿に浸す。
 エ 薄く切れた切片をスライドガラスにのせ、メチレンブルー液で染色し、カバーガラスをかけて検鏡し、スケッチする。

 (3)  発展:Caイオン(Ca2+)の検出

    「(2) 硬骨の観察 ア」で硬骨を浸しておいた食酢にCa2+が溶出したことを確認してみよう。

  ア 硬骨を浸しておいた食酢で炎色反応を行ってみる。食酢のみの炎色反応、Ca2+を含む水溶液の炎色反応も行ってみるとよい。

    
結果:かなり分かりにくいが、硬骨を浸しておいた食酢ではCa2+(橙赤色)の炎が観察できる。食酢のみでは橙赤色の炎は観察できない。これらの結果より、硬骨を浸した食酢にはCa2+が溶出したことが確認できる。
 
 イ 硬骨を浸しておいた食酢の少量を試験管に取り、シュウ酸水溶液を数滴入れてみる。

 
    結果:白色沈殿を生じる。この白色沈殿は難溶性のシュウ酸カルシウムである。この反応によっても硬骨を浸した食酢にはカルシウムイオンが溶出していることの確認ができる。

4 参考資料

  骨組織を含む結合組織は中胚葉由来であり、他の組織や器官の間に分布し、組織と組織の間を支持し、結合させ、連絡にあたることが役割である。このため結合組織の特徴として細胞間物質を多量に含むことがあげられる。
結合組織には、真皮・硬骨・軟骨・血液などが含まれる。硬骨・軟骨の組織においても、硬骨組織ではカルシウム塩、軟骨組織ではコラーゲンを含む繊維性物質が、細胞間物質として多量に存在する。これらの組織を観察することで、結合組織の個々の細胞の間に間隙が存在し、そこに細胞間物質が含まれることが理解できる。また、硬骨の細胞間物質としてカルシウム塩の含まれていることを、溶出させたカルシウムイオンの炎色反応やシュウ酸イオンとの沈殿反応によって知ることもできる。

(1) 軟骨
図1のスケッチより、軟骨細胞・細胞小嚢・細胞周部・軟骨基質などが観察できる。各細胞は、円形またはだ円形に近く、その回りには、軟骨小嚢が緻密な壁をつくり、その外側に細胞周部がある。いくつかの細胞が集まって細胞領域を形成し、軟骨基質(細胞間物質を多量に含む)の間に散在している。

(2) 硬骨
図2のスケッチより、ハヴァース管・骨小腔・ハヴァース層板などが観察できる。規則正しく並んだハヴァース管(血管及び神経の通路にあたる)を中心として同心円的層板構造がみられる。その間に骨細胞をおさめる多数の骨小腔がやはり層状に分布するのが観察できる。ハヴァース層板は、骨基質(細胞間物質)を多量に合んでいる。

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