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筋肉の観察(横紋筋と平滑筋

1 目的

  動物組織は、上皮組織、結合組織、筋肉組織、神経組織の4つに大別される。ここでは、肉屋等で簡単に手に入るニワトリの手羽、焼肉用ホルモンを材料に筋肉の観察法を紹介した。


2 準備

 (1) 材料
ニワトリの手羽、ブタの消化管(肉屋等で焼肉用ホルモンとして購入できるもの)

 (2) 器具
顕微鏡、スライドガラス、カバ−ガラス、時計皿、
先細のピンセット、柄付き針、解剖ハサミ

 (3) 薬品
メチレンブルー水溶液(約0.1%)


3 実験手順

 (1) 骨格筋(横紋筋)の観察

  ア ニワトリの手羽から、腱で骨に結びついている骨格筋の一片を解剖ハサミで切り取って水を入れた時計皿の中に浸す。
  イ 時計皿の中で先細のピンセツトにより筋肉片を押え、柄つき針で髪を櫛でとかすように筋繊椎(筋細胞)をほぐす。
  ウ 筋繊維が十分に解離したら、スライドガラスにのせ、薄いメチレンブルー液で染色する。
  エ 4〜5分後にカバーガラスをかけて検鏡し、スケッチする。

 (2) 平滑筋の観察
  ア ブタの消化管から、解剖ハサミで小片を切り取って水を入れた時計皿の中に浸す。
  イ 時計皿の中で先細のピンセツトにより筋肉片を押え、小片を解離する。
  ウ 消化管の小片が十分に解離したら、いくつかの部分をスライドガラスにのせ、薄いメチレンブルー液で染色する。
  エ 4〜5分後にカバーガラスをかけて検鏡しスケッチする。この際、消化管の内壁の上皮組織や結合組織、平滑筋組織が混在しているので、同じ向きに細長い核や細胞の集まった部位を選んでスケッチする。

4 解説
 動物の組織は次のように分類される。

上皮組織
結合組織
神経組織
筋肉組織 平滑筋
横紋筋 骨格筋
心筋


 (1)  骨格筋 

    骨格筋は複数の核を持つ円柱形の骨格筋繊維(筋細胞)から構成されている。運動神経に支配され、意識的に動かせる随意筋である。骨格筋織維は、太さ10〜100μm、長さは10cmに達するものもある。多核細胞であるのは、個々の細胞が融合し細胞質が混合しているからである。このため、細胞質の主体である収縮性の夕ンパク質からなる筋原繊維を一つの筋繊維内に多量に有することになる。敏速で強い収縮を可能にするとともに、疲労しやすい性質をあわせもつのはこのような理由による。顕微鏡で観察すると、低倍率では筋繊維そのものが観察できる。高倍率(400〜600倍程度)では、繊維の長軸に対し垂直に走っている横紋を観察することができる。この横紋は筋原繊維を構成するアクチンとミオシンという二種類のタンパク質が規則的に配列しており、太いフィラメントであるミオシンの部分は暗く(暗帯)、ミオシンと重ならない細いアクチンフィラメントだけの部分は明るく見える(明帯)ことの結果である。筋収縮のしくみは、ATPのエネルギーにより、アクチンフィラメントがミオシンフィラメントの間に滑り込むという「すべり説」により説明されている。

(2)  平滑筋

   平滑筋は横紋をもたない筋繊維(筋細胞)から構成される筋肉で、進化的には横紋筋より原始的なものと見なされている。主な存在場所は、セキツイ動物の内臓(心筋を除く)や血管壁などであり、自律神経の支配をうけ意志とは無関係に収縮する不随意筋である。平滑筋繊維は単核で細長い紡錘形の細胞である。大きさはさまざまで、長さ約20nmから0.5mmにいたるものまであるとされているが、直径数μm長さ100μm程度のものが多い。収縮は骨格筋に比べてゆるやかだが、疲労しにくく持続的にくりかえされる。
  この実験では、消化管において分節運動やぜん動運動といった物理的消化に関係する環状筋もしくは縦走筋を観察したことになる(図3)。環状筋は、消化管を環状に取り巻く筋肉であり、縦走筋は消化管の長軸に沿って走る筋肉である。分節運動は主に小腸にみられるもので、腸管に一定の間隔で環状筋に収縮が生じて起こる。ぜん動運動は縦走筋と環状筋が相拮抗して収縮することにより起こる。

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