back |
ミトコンドリアの観察(TTCによる染色)
1 目的
好気呼吸の場であるミトコンドリアは、ヤヌスグリーンで染色し観察されることが多い。ここでは、TTC(トリフェニルテトラゾリウムクロライド)で染色して観察することを目的とした。
2 準備
(1) 材料 オオカナダモ(緑藻)
(2) 器具 試験管、ツンベルグ管、ウォーターバス、台所用アルミ箔、検鏡用具一式
<図1>(左:実験前 右:実験後) |
(3) 薬品
TTC試薬
0.2%TTC(トリフェニルテトラゾリウムクロライド)溶液(10mL) | 混合液 | |
0.1Mコハク酸ナトリウム溶液(10mL) | ||
1/15Mリン酸緩衝液(pH7.7)(10mL) | ||
0.5%ハイドロサルファイトナトリウム(Na2S2O4)溶液 |
注) ・TTCは光によって分解するので、暗所に保管すること。
・1/15Mリン酸緩衝液の調整
A液 1/15Mリン酸水素二ナトリウム溶液
(Na2HPO4・12H2O、23.883gを純水に溶かして1000mLとする。)
B液 1/15Mリン酸二水素カリウム溶液
(KH2PO4、9.078gを純水に溶かして1000mLとする。)
A液(9.0mL)とB液(1.0mL)を混合する。
3 実験手順
(1) 予備実験
試験管に0.2%TTC溶液を少量とり、これにハイドロサルファイト溶液をごく少量加えると、TTCが還元され濃い赤色のTPFができる。
*染色の原理
TTCは水素で還元されて、水に溶けない赤色をしたTPF(トリフェニルホルマザン)となる。ミトコンドリアには好気呼吸に関する酵素群の1つであるコハク酸脱水素酵素が含まれている。TTC試薬の中に植物組織を入れると、ミトコンドリア内で基質の脱水素反応が起こり、遊離した水素でTTCが還元され、赤色のTPFとなる。したがって、脱水素酵素のはたらきが強いミトコンドリアが染色されることになる。
(2) 本実験
(ア) ツンベルグ管の主室にTTC試薬10mLとオオカナダモの先端部(軸長約2cm)を入れる。(図2)
(イ) アスピレーターで排気する。(空気中の酸素を取り除くため。)
(ウ) このツンベルグ管を台所用アルミ箔で覆って光を遮断し(図3)、36℃程度に調節したウォーターバスに入れ、3時間以上置く。
(エ) 台所用アルミ箔をはずし(図4)、ツンベルグ管からオオカナダモを取り出す。先端部の若い葉(3〜4mm)を取り、水で封じて検鏡する。成長した葉では葉緑体が多く、ミトコンドリアを観察しにくい。
<図2> | <図3> | <図4> |
(3) 観察結果
このような方法によって、図5のように観察される。赤く染まっている粒子がミトコンドリアである。(黄色っぽく見える粒子は葉緑体である。)
<図5>
4 参考資料
(1) 1個の細胞内に何個くらいのミトコンドリアが存在するか予測をたて、観察を通して確認する。
(2) ミトコンドリアの活動(ここでは脱水素反応)を通して染色するため、36℃という温度は、好気呼吸に関する酵素群にとって好条件を設定したことを示している。
(3) 台所用アルミ箔で光を遮断するのは、葉緑体の明反応で水の分解が起こり、これで生じる水素によってTTCが還元されないためである。つまり、葉緑体が染色されることを防ぐためである。 また、TTCが光によって分解されてしまうのを防ぐためでもある。
(4) 検鏡試料の作成に数時間を必要とするため、観察時間に応じて準備する必要がある。
5 参考文献
大阪府高等学校生物教育研究会編:高等学校生物実験書 1983
湯浅明:生物学実験 器具と薬品 北隆館 1982
愛知県立岡崎北高等学校生物教育研究会:生物の実験 1988
back |