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ニワトリの発生〜ニワトリ胚の卵殻内培養〜

1 目的 

孵化(ふか)までのニワトリ胚の発生の様子を継続的に観察する。

2 準備

[材料]

ニワトリの有精卵(愛知県畜産総合センター種鶏場より入手),市販のLサイズの無精卵(容器用卵殻や水様性卵白の採取用)

[器具] シャーレ,50mLシリンジ,保定器,安全カミソリ,ラップ(約7cm×7cm角),切断砥石を取り付けたミニルーター
[薬品] 消毒用70%エタノール(卵や器具を使用前に払拭して殺菌した)

3 方法


図 ニワトリ胚の卵殻内培養法
System1:胚盤葉から胚体形成までの培養過程(培養0〜3日目)
System2:胚体の成長から孵化までの培養過程(培養3日目〜孵化)

(1) 容器用卵殻の鋭端部を直径約4pの円で切断し,内容物を除去する。

(2)

この容器用卵殻に,あらかじめ採取しておいた水様性卵白を約半分入れる。
(3) その中に有精卵の卵黄部分のみを移し,その後水様性卵白で容器用卵殻内を満たす。
(4) ラップで切断面を覆い,保定器を用いてラップと卵殻を固定する。
(5) 孵卵器の中に保定器に固定した卵殻を横向きに入れ,3日間孵卵する(図 System1)。
(6) 静置すると卵殻膜に胚盤が接着するので,1日2回以上転卵する。
(7) 培養3日目の胚を,ニワトリ卵の鈍端部に穴をあけた別の容器用卵殻に,水様性卵白とともに移し替える。
(8) 水様性卵白の量は容器用卵殻の半分程にし,上部に気層を設け,ラップで密封して縦向きに孵卵器内へ入れ,孵卵する(図System2)。
(9) 培養19日目頃に転卵をやめ,肺呼吸を助けるためにラップに針で小さな穴を開ける。
(10) 培養21日目頃には雛が卵殻から出やすくなるように,保定器をはずし,ラップを取り除き,プラスチックシャーレで容器用卵殻の開口部を覆い,孵化を待つ。

4 結果・考察

(1) 卵殻内培養の結果
  卵殻内培養による孵卵の様子を1日ごとに動画撮影した。


(2) 卵殻内培養の考察
  今回,有精卵30個を用いて卵殻内培養を行ったが,孵化に至った個体は1個体のみであった。しかし10日目くらいまでなら,ほとんどの個体が発生し,継続的に観察することは可能である。 卵殻内培養を生徒実験で行うことは技術面で難しいが,割卵による観察実験を行う前の教材として利用すると,発生の様子がよく分かり,効果的である。

5 留意点

(1) 孵化をさせるには,System1からSystem2へ移し替える際に,いかに衝撃を少なくし,卵黄膜を傷つけないかが,ポイントである。(移替えを省く方法にも試みたが孵化しなかった。)
(2) 授業で映像教材を使用する時,1回目は全体を通して発生の様子を見させ,生命の誕生を感じさせる。2回目に,孵卵何日目でどんな変化が観察されるかという細かいところに注目させると良い。(映像では,おおよそ次の日数で変化が観察される…3日目−心臓拍動,5日目−眼や脳胞,6日目−手や胚膜,7日目−脚,14日目−羽毛,16日目−爪,21日目−肺呼吸,22日目−孵化)
(3) このような映像を苦手とする生徒もいるため,見せる前に内容の説明などに配慮をする必要がある。


この実験教材は,高等学校学習指導要領解説(理科編)における
生物(2)生殖と発生
また,小学校学習指導要領解説における
理科〔第5学年〕 B生命・地球 (2)動物の誕生
という項目において利用できる。

7 参考文献
 内藤充:ニワトリ受精卵(胚)の体外培養法 細胞工学10:501−506(1991)

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