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レプリカ法による気孔の観察

1 目的

 気孔の観察は表皮をはがして簡単に観察することができるが、この方法ではムラサキツユクサなど表皮をはがしやすい植物に限定される。表皮がはがれない植物でも、葉の鋳型を取ることにより、それを顕微鏡で容易に観察することができる。また、生きている状態を写した形でそのまま観察できるので、気孔の開閉の状態を調べることができる。ここでは、レプリカ法として、水絆創膏を用いた方法とセメダインを用いた方法について触れてみたい。

2 準備


(1) 材料
 植物の葉(特に限定しないが、ツバキ、サザンカ、ヤツデ、ヒマワリなどが観察しやすい。)
 
(2) 器具

 水絆創膏を用いる方法… 水絆創膏、ピンセット、スライドガラス、カバーガラス、顕微鏡
  * 水絆創膏(液体絆創膏)…薬局で600円くらいでチューブ入りのものが購入できる。
 セメダインを用いる方法… プラスチック板、セメダイン(プラモデル用)、スライドガラス、顕微鏡
  * プラスチック板は、イチゴのパックやコンビニ弁当箱のふたなどを利用するとよい。
 玩具店でプラスチック板を購入することもできる。厚さ0.5〜1.5mmくらいのものを使用するとよい。 プラモデル用のセメダインはプラスチックを溶かすので、セメダインを塗ったプラスチック板を葉に押し付けて、気孔の鋳型を取ることができる。


3 実験手順

(1) 水絆創膏を用いるレプリカ法


ア 観察したい葉の裏面に、水絆創膏を直径10〜20mm程度の円形に薄く塗り付ける。(できるだけ、薄く塗るようにする。乾いたとき無色でなければいけない。白くなっているようでは厚すぎる。)
イ 数分後、ピンセットで固まった水絆創膏をはぎ取る。(葉を2つ折りに曲げながら、水絆創膏の縁から丁寧にはがせば、きれいに取ることができる。)
ウ スライドガラスに少量の水を取り、葉からはぎとった水絆創膏の片をその中に入れる。
エ カバーガラスをかけて、顕微鏡で見る。(はぎ取った水絆創膏の片を水中に入れずに、そのまま観察するほうがよく見えることがある。)
オ こうして表皮の鋳型の形を見て、表皮の凹凸の具合や気孔の形、数などを知ることができる。

(2) セメダインを用いるレプリカ法

ア プラスチック板を用意する。
イ 薄いプラスチック板は1×1cmくらいの大きさに切り取る。厚いプラスチック板の場合には1×3cm位に切り取る。(厚いプラスチック板は、スライドガラスにのせずに観察したほうがよいので大きめに切り取る。)
ウ プラスチック板にセメダインを1滴くらい塗りつける。
エ セメダインのついている面を葉の裏面に当てて、指で押しつける。
オ 3〜5分後、セメダインが固まったら、プラスチック板を葉からはぎ取る。
カ 薄いプラスチック板はスライドガラスに乗せ、厚いプラスチック板の場合は、そのまま顕微鏡のステージに乗せ、セメダインが塗ってあった部分を観察する。(カバーガラスはかけない。)




4 レプリカ法の長所・短所

(1)材料を選ばず、切片を薄く切ったりする必要もないのでだれにでも容易にできる。
(2)レプリカ法を使うと、そのとき気孔が開いていたか閉じていたかを調べることができる。
(3)レプリカ法は細胞そのものを見るわけではないので、特定の細胞小器官のみ染色することはできない。したがって孔辺細胞の核や葉緑体の存在を確認することはできない。
(4)レプリカ法は葉の表面だけでなく、樹木の幹や動物の体表を調べるときにも利用できる。


5 指導資料

(1) 気孔は、一般に葉の裏面にしかないと思われているが、葉の表面にも気孔がある植物も多い。
  双子葉植物では、気孔は表:裏=3:1の比で存在する。
  単子葉植物では表裏同じように存在する。
  スイレンなどは葉の表だけに気孔が存在する。
  * 透明な方眼紙をスライドガラスの下に敷いて、一定面積の中にある気孔を数えて葉の部分や植物の種類によって比較するとおもしろい。
(2) 数種の植物について、1日のうちのいろいろな時間のときに、この方法で鋳型を取ると、気孔が開いたり閉じたりする時間を調べることが可能である。
  (かなりの植物が夜に気孔を開いているという報告もある。)  



6 参考文献  
 絵を見てできる生物実験 岩波洋造・森脇美武 講談社、1983

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