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 卵を用いた浸透圧の実験

1 目的

 卵は、卵殻、卵白、卵黄から成り、 卵白を包む膜は、半透性に近い性質をもつことが知られている。 半透性とは、水のような小さい分子は通すが、大きい分子は通さない性質であり、 濃度の異なる2つの溶液を半透膜で仕切ると、濃度の低い方から高い方へ水分子が移動する。 この現象を身近な材料を使って確かめるために、 鶏卵から卵殻を取り除いた卵を使った実験を行った。   


2 準備


(図1) 実験で使用する材料・器具


(1) 材料
 
鶏卵
 
(2) 器具
ビーカー、メスシリンダー、電子天秤


(3) 薬品
酢酸、ショ糖




3 実験手順

(1) 鶏卵2個を20%酢酸溶液の入ったビーカーに入れ約1日置く。(図2)


 (10%酢酸溶液の場合は、約2日置く


(2) 軽く水洗いすると、少し残っていた殻も取れる。(図3) 


(3) 1個の卵殻除去卵は、水に浸し、約1日置き、質量を測定する。(図4)


(4) もう1個の卵殻除去卵は、1Mショ糖溶液に浸し、約1日おき、質量を測定する。


(図2) 酢酸溶液に浸した鶏卵 (図3) 卵殻が除去された鶏卵



           
(図4) (左)卵殻除去前 (右)水に浸した後     (図5) (左)卵殻除去前 (右)1Mショ糖溶液に浸した後



(図6) 生徒実験の様子
(卵を手に取って重さを調べている)

4 結果
【質量測定の結果】
 
  質量       備 考
卵殻除去前 62g ※卵殻を除くと約56g(卵殻の質量は約6g)
卵殻除去後 74g ※卵殻除去の操作過程ですでに吸水が起こっている。 
1Mショ糖溶液に浸した後 59g 膜がたるんでぶよぶよしている。 
水に浸した後 77g 膜がぱんぱんに張っている。 


(図8) 1Mショ糖溶液に浸したもの (図9) 水に浸したもの

   

5 考察

 卵殻を除去した卵は見た目にも楽しく、この卵を見せるだけで生徒は大変興味を示した。 また卵を触ると、吸水しているのか脱水しているのか、さらに膨圧が生じているかを感じることができ、 浸透現象の理解に役立ったようだ。 
 この実験において、卵殻除去卵を水やショ糖溶液に浸し質量の時間的変化を測定したところ、 1Mショ糖溶液に浸した場合の脱水には時間がかかり質量変化が見られなくなるまでに約1日かかったが、 水に浸したときの吸水は非常に短時間で起こった。 そこで、授業では、あらかじめ1Mショ糖溶液に浸し収縮したものを、水に浸して変化を見せてもよいと思われる。
 また、1Mショ糖溶液に1日以上置くと再び吸水を始め、質量が増加した。 (今回の測定では、2日置くと70g以上になった) これは、卵白を包む膜がショ糖をゆっくりと透過させるためであると考えられる。


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