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簡易ツルグレン装置を用いた土壌動物の観察
1 目的
土壌の中には,植物の落ち葉などを食べる消費者や,その消費者を食べる動物食性動物である消費者が生息している。体長0.2〜2mm程度の中型土壌動物を採集するための器具としてツルグレン装置というものがあるが,市販のものは高価でたくさん購入することは難しい。そこで,手作りのツルグレン装置を作成し,土壌生物の採集をする。 また,幾つかの場所を選んで土壌を採集し,採集される動物の数や種類の違いを比較しながら観察し,それぞれの生物の食性を調べ,土壌内における食物網を推定する。 |
2 準備
・簡易ツルグレン装置の作成 ジョウゴ(直径15cm程度),台所用排水ネット(2〜3mmの網目),三脚台,白熱球(電気スタンド),ビニールテープ ・土壌生物の採集,観察 スコップ,軍手,ビーカー,実体顕微鏡,ピンセット,シャーレ,70%エタノール, |
3 方法
(1) | 市販のプラスチック製ジョウゴ(図1)に,適当な大きさに切った台所用排水ネット(図2)を被せ,ビニールテープでとめる。 | |||
図1 ジョウゴ | 図2 ジョウゴに排水ネットを被せる | |||
(2) | ネットを被せたジョウゴを三脚台の上に乗せ(図3),電気スタンドをセットする(図4)。これで簡易ツルグレン装置は完成である。 | |||
図3 三脚台に乗せる | 図4 実際は土を入れてから照明をつける | |||
(3) | 採集場所を選択し,深さ5cm程度の土壌をビーカーなどに採集する(図5,6)。 | |||
図5 表面の落ち葉などは除く | 図6 深さ5cmの土壌を集める | |||
(4) | 採集した土壌を持ち帰り,ツルグレン装置に入れる。このとき,肉眼で確認できる比較的大きい動物がいれば先に採取し,70%エタノールにの入ったビーカーに入れる。また,網目から土壌が少し落ちてくるので,別のビーカーで受ける(図7)。 ツルグレン装置の下に70%エタノールの入ったビーカーを置き,照明をつけ,24時間以上静置する(図8)。土壌中の生物は照明による乾燥と熱を嫌い下へ移動する。結果,網目を通り抜け,エタノールの入ったビーカーの中に落下し,土壌中の動物が採集できる。 |
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図7 採集した土壌を装置に入れる | 図8 点灯して24時間以上静置する | |||
(5) | エタノールごとシャーレに移し(図9),実体顕微鏡などを用いて観察する(図10)。 | |||
図9 70%エタノールごとシャーレに移す | 図10 実体顕微鏡で観察する |
4 観察とその後の授業展開例
(1) 観察した動物をスケッチ,または写真撮影する(図11〜図14) | ||
図11 ハエ類の幼虫 | 図12 ダニ類 | |
図13 ダニ類 | 図14 ダニ類 |
(2) 展開例:種の検索 土壌動物の分類は難しいため,種名までは同定せず,下表のような脚の有無や数で分類しまとめる。 (参考 だれでもできるやさしい土壌動物のしらべかた 青木淳一 著 2005) |
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土壌の違いと,見られる種の数の違いにどのような関連があるかを考える。 | ||||||||||||||||||||
(3) | 展開例:食物網の推定 | |||||||||||||||||||
分類した土壌動物の食性を調べ,食物網を推定する。食物網が推定できれば,その土壌における物質循環とエネルギーの流れがわかる。落ち葉が多く,発達した土壌ほど,見られる種が多く,食物網が複雑にからみあっていることを実感する。 | ||||||||||||||||||||
5 留意点
(1) | 70%エタノールに土が入ると選別が難しくなるため,土が入らないように極力静かに操作する。 | |
(2) | 電気スタンド(白熱球)は24時間以上点灯する必要があり,かなりの熱を発するので,ジョウゴを近づけすぎない。また,周りに燃えやすいもがないか,十分に確認する。 | |
(3) | 土壌の違いによる,見られる生物種の違いを考察する場合は,土壌の採取を定量的に行う必要がある。 | |
6 参考文献
教科書 生基310 生物基礎 実教出版 青木淳一編著 日本産土壌動物−分類のための図解検索− 東海大学出版会(1999) 青木淳一著 だれでもできるやさしい土壌動物のしらべかた 合同出版(2005) |
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