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魚とりゲーム


 この実習は平成9年4月2日の中日新聞の「一週一話 第153話 環境教育B 『クロマグロの悲劇』」を参考にしたものである。


 目的

 魚(クロマグロ)を捕ることのシミュレーション(ゲーム)を通して、生物資源を枯渇させるものが何かを実感させ、資源保護のために何が必要なのか考えさせる。


 規則

 教室の2か所に大・中・小のクロマグロの図をばらまき、班対抗で魚釣り競争をする。ただし、1か所には大・中のクロマグロをまき、ここを遠洋漁場と呼ぶ。もう1か所には小・中のクロマグロをまき、ここを近場漁場と呼ぶ。

詳細

(1) 遠洋漁場には儲けの多い大・中のクロマグロがおり、捕まえるには釣り竿で釣る。
(2) 近場漁場には儲けは少ないが大量の小・中のクロマグロがおり、ビニール袋(網のつもり)で捕る。
(3) 1時間内に3回、遠洋漁場か近場漁場のどちらかに出漁する。
(4) 1回の出漁に遠洋漁場は5万円、近場漁場は3万円かかる。
(5) 1回の出漁の時間は5分間とする。
(6) 直接手で捕るなどの不正行為は1万円の罰金とする。
(7) 大は1万円、中は千円、小は10円の儲けがあるとする。
(8) 儲かった班は漁船(1隻20万円)を増やすことができ、その場合は釣竿をもう1本与える。
(9) 釣られずに残ったクロマグロは以下の要領で産卵、成長するものとする。

・大1匹から小100匹が生まれる。
・中5匹から大1匹になる。
・小10匹から中1匹になる。

例)1回目の漁の後、大が28匹、中が40匹、小が30匹残っていたとすると、
大28匹が産卵する小の数は→28×100=2800匹
中40匹のうち大に成長できるのは→ 40÷5=8匹
小30匹のうち中に成長できるのは→ 30÷10=3匹

 つまり、2回目の漁は
大:28+8=36匹、中:40−8+3=35匹、小:2800匹からスタートさせる。
注1)小を1000匹しか用意していない場合は小1000匹でのスタートとなる。
注2)ほとんど魚が残っていない場合は、漁場を替えるという設定で最初と同じ場所に全てのクロマグロをまく。


 準備

クロマグロの絵、棒、たこ糸、マグネット、セロテープ、クリップ、ストップウォッチ、電卓、釣ったクロマグロを回収する3つの箱(どんな物でも良い)、授業プリント(内容説明用記録、考察用 共にWordで作成してあります。)


(1) 3種類の大きさのクロマグロの絵を大100、中300、小1000程度印刷し、はさみで切り抜く。
    
3種類のクロマグロ


(2) 大のすべてと中の200のクロマグロ(遠洋漁場にまくためのもの)の口の部分にクリップをつける。

(3) 簡易な釣竿を作る。

 棒、棒と同じ程度の長さのたこ糸、磁石をテープでつける。
 写真では約80cmの棒とたこ糸を使用している。


釣竿の例

(4) 4〜10班程度(1班3、4名)の班分けをする。
 
(5) 班内で漁師、機関士、監視員の役割を決める。

漁師…釣竿でクロマグロを釣る。又はビニール袋でクロマグロをすくい捕る。
機関士…漁師が釣ったクロマグロを受け取る。
監視員…不正(手でクロマグロを捕る、釣糸を短くする、他の班の邪魔をする、制限時間を守らないなど)がないか監視する。 また、次の出漁の準備をする。

 1時間に3回出漁することとするため、3人班の場合は3つの役を順番に行う。4人班の場合は監視員を2人とする。

  例)○○班(班員3名;A君、B君、C君)
1回目 2回目3回目
漁師 A君C君B君
機関士 B君A君C君
監視員 C君B君A君







 方法

(1) 黒板に各班の釣ったクロマグロの数と儲けを記入する表を書いておく。

<板書する表の例>

漁獲数  
1回目2回目3回目合計
1班             
2班             
3班             
4班             
5班             
合計             

 5班の場合。
 毎回、釣ったクロマグロの数(大・中・小の数を全て足す)を記入する。
 また1〜3回それぞれのクラス全体の数も合計しておく。






売上高  
1回目2回目3回目出漁経費売上合計順位
1班     円     円     円  万円× 回      円   位
2班     円     円     円  万円× 回      円   位
3班     円     円     円  万円× 回      円   位
4班     円     円     円  万円× 回      円   位
5班     円     円     円  万円× 回      円   位
合計     円     円     円     万円      円   位

 5班の場合。
 毎回、大(一万円)、中(千円)、小(10円)で合計金額を計算し、記入する。
また1〜3回それぞれのクラス全体の売上も合計しておく。


 各班の売上合計=(1〜3回の売上の合計)ー(3回分の出漁経費)で計算する。




(2) 教室の2か所にクロマグロをばらまく。遠洋漁場(例えば教室の後ろの方)にはクリップをつけた大と中のクロマグロを机の上や下、椅子の上などにまく。近場漁場(例えば教卓の上など)にはクリップのついていない中と小をばらまく。

(3) 各自の役割を確認させ、遠洋漁場に出漁する班には釣竿1本を、近場漁場に出漁する班にはビニール袋1袋を渡す。

(4) 魚釣りをスタートさせ、ストップウォッチ(なければ教室の時計で良い)で5分計測する。機関士は漁師の釣ったクロマグロを預かり、監視員は不正がないか見張る。
   
魚釣りの様子



(5)5分経過したら監視員以外は席につき、自分の班の大中小それぞれの釣った数を数える。
 電卓で儲け(大1万円、中千円、小10円)を計算し、 (プリント)、黒板にも結果を記入する。数え終わった魚は、大きさ別に回収箱に入れる。
 
 この間に監視員は残った魚の数を数え、産卵、成長により追加するクロマグロの数を計算して追加する。
 (後ろの黒板等に 規則(9)の計算方法を書いておく)追加分は、各班が回収箱に戻した魚を使用する。

(6)次のシーズンの役割を確認し、同様にあと2回行う。


 結果例

漁獲数
 
1回目2回目3回目合計
1班9939701,971
2班20231053
3班27202572
4班3142
5班23361372
合計1,0941,051652,210


売上高
 
1回目2回目3回目出漁経費売上合計順位
1班9万3千900円2万9千500円2万6千円3万円×2回+5万円6万4千530円 4位 
2班12万8千円14万円2万8千円5万円×3回14万6千円 3位 
3班15万3千円11万円8万8千円5万円×3回20万千円 1位 
4班6万7千円2千円8万千円5万円×3回0円 5位 
5班13万2千円14万4千円6万7千円5万円×3回19万3千円 2位 
合計57万9千30円42万5千500円29万円69万円60万4千530円
備考

 1回目スタート時の数は1,400匹(近場:1,100、遠洋:300)
 2回目は1,218匹(近場:1,019、遠洋:199)
 3回目は1,134匹(近場:1,005、遠洋:129)

 1班は1回目、2回目は近場漁場に出掛けて小・中のクロマグロをほとんど取り尽くしている。3回目には近場漁場には儲けにならない小のクロマグロばかりになったため、3回目は遠洋漁場に替えている。小の魚を捕り尽くしてしまうと、中や大のクロマグロに成長できず、漁場のクロマグロの数は減少していく一方である。
 2班と5班は2回目から要領をつかんで数を増やしたが、3回目には漁場のクロマグロが減っているため、漁獲量は減少した。
 4班はこの実験の意図を意識したのか(?)、クロマグロを捕りすぎず、赤字にならないように計算して行ったようだ。
 全ての班の合計を見ると回数を経るごとに漁獲量・売上高ともに減少していることが分かる。



 考察

 2回目、3回目と漁獲数・売上高が減少した。この理由は明らかに漁場のクロマグロの数が減少したからである。この実習は実物の魚ではないが、紙の魚でさえも魚を前にすると「もっと、もっと」と魚釣りに夢中になる気持ちが生じる。さらに他の漁師に負けたくない、売上を伸ばしたいという気持ちが働くことが実感できる。このまま漁を続ければ、クロマグロの絶滅が危惧されることは容易に想像できる。そうさせないためにはどうしたら良いかを生徒に考えさせたい。船の数や捕獲期間に規制を設ける、一部地域だけでの話合いなどではなく国際協定を設けるなど、各班で話し合いをさせ、有限な地球で生きていくために必要なことを考えさせたい。



 生徒の感想

 ・このままでは魚がいなくなってしまう。漁の制限をするべきだ。
 ・小さい魚を捕るのを制限し、養殖する。
 ・過剰に捕り過ぎないようにすべきだ。
 ・1種類の魚がいなくなると海の生態系も変わって、私たちの生活にも影響が出てくると思う。
 ・漁の期間とか捕っていい漁獲量の協定をつくるべきだ。
 ・私たちが無駄に買って食べ残すようなことをしない!そのせいで魚の需要が多くなって、漁師も捕らざるをえなくなるから。

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