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7 テストBの結果とその考察

平成22年度高等学校入学者数学学力テストB の問題・正答率・誤答率・主な誤答

(1)  樹形図の指導を徹底する
A,B,C,Dの4人がそれぞれ1つずつプレゼントを持って集まり,プレゼント交換会を開くことになった。4人のプレゼントをいったん集めて,あらためて4人に1つずつ配ることにする。このとき,自分が持ってきたプレゼントを自分で受け取る人が1人もいないような配り方は何通りあるか,求めなさい。                        (正答率34.0% 無答率1.5)

  全体から,「4人とも自分の持ってきたプレゼントになる場合」「2人が自分の持ってきたプレゼントになる場合」「1人が自分の持ってきたプレゼントになる場合」を引くと求められるが,なかなか気付かず,樹形図で求めた生徒が多いようである。一見,基本的な問題のようであるが,「自分が持ってきたプレゼントを自分で受け取る人が1人もいない」という条件があるために,正答したのは34.0%しかいなかった。また全体の約3割の生徒が12通りという誤答を導いた。自分のプレゼント以外の3種類×4人,という誤答と思われる。

今後の指導に向けて
数え上げの問題にはじめて触れるのは,中学の時である。そこで樹形図の考え方を習う。高校では乗法公式や,順列の公式,組合せの公式などを新たに学習するが,樹形図を用いて「漏れなく」「重複なく」数え上げることは数え上げの問題の基本である。この問題は,自分のプレゼントをもらわないように配ることがポイントであり,そのことがこの問題を複雑にしている。丁寧に数え上げられるように指導していきたい。
 また,単に樹形図を書くだけでなく,漏れなく,重複なく数え上げることを工夫させてみることで,興味関心が向上し,自ら問題を考え解決していこうという姿勢が生まれるのではないだろうか。
 例えば図1は標準的な解法であるが,図2の方法ならば,Aに配ったプレゼントがbだった時,順番はB→C→Dの順で受け取るとして,ここまでは図1と同じ樹形図であるが,Aがcのプレゼントを受け取った場合には受け取る順序を変更しC→D→Bとし,dを受け取った場合には受け取る順序を変更しD→B→Cと変更すれば,どのパターンも形は同じで,記号の入れ替えだけでよくなる。このように,工夫することできれいに3×3が現れるのである。
    
(2) 変化の割合を正しく理解していない。

[1](8)は変化の割合の問題である。全体の正答率はH16,H22ともに60%前後で,上位群の正答率は約90%であった。しかし,下位群の正答率を比較すると,H1618%であるのに対し,H2234%と差が出た。これは,数値を代入する2次関数の x の係数が文字であるか,数であるかの違いにあると考えられる。また,主な誤答をみると,1次関数の変化の割合が x の係数となるのと同様に,2次関数の変化の割合も x の係数であると考えている生徒が少数いることが分かる。

今後の指導に向けて

 問題が複合的であったり,x の係数に文字が入ると正確に処理することができないと考えられる。「変化の割合=yの増加量/xの増加量」であること,「1次関数の変化の割合は直線の傾き」であることをしっかりと復習したい。特に,2次関数の変化の割合は「2つの端点を結ぶ直線の傾き」を表し,その値は一定でなく,1次関数の変化の割合とは異なるということをしっかりと理解させたい。


(3)事象を数学的に処理し関数を立式できない生徒が多い。
 22[2](1)は,9x13 を満たす具体的な数値を与え, (2)のヒントになっている。(1)の正答率は68.4(上位群90.1%/下位群43.7),無答率7.7(上位群0%/下位群29.8)と多くの生徒が問題を解くことができた。しかし(2)においては,誘導問題のなかったH21と今回とで正答率の違いは現れず,29.8%と低かった。主な誤答に,高さをCDの長さ8㎝から 2x を引いて 8-2x として面積を求めた 4010x がある。点Pが辺CD上にあることは理解しているが,適切に処理ができない生徒がいることが分かる。
 【今後の指導に向けて

事象を数学的に処理をして関数を立式できるよう,指導を工夫したい。まずは,全体の状況を把握し,イメージをもたせることが重要である。様々なパターンを,段階を経て提示することで,全体の数量関係をイメージさせたい。

さらにグラフを用いることで,面積の変化様子を視覚的にとらえることができる。グラフをかくことは全体のイメージをつけさせるためにも,効果があると考える。


(4) 円の性質の分野ではいろいろなタイプの問題に取り組ませたい。
 [1](10)では,円周角と中心角の関係を出題した。しかし,正答率は53.8%しか無く,上位群で85.4%,下位群で20.5%であった。最頻誤答は扇形の中心角と同じ大きさの108°で,18.0%もあった。
 正答にたどり着けなかった要因として,円周角と中心角の関係が理解できていないことが挙げられる。ただ,円周角の問題は扇形ではなく円での出題が多く,扇形での出題に慣れていない可能性がある。また,∠APBは弦ABの優弧に対する円周角であるため,∠APBに対する中心角の大きさが180°より大きくなり,生徒には考えにくい問題であった可能性もある。
 【今後の指導に向けて
 この問題の解法として次の3つを挙げる。ただし,現行課程では円に内接する四角形の対角の和が180°であることは,高校の数学Aで学習する内容なので,この段階では,解法3で解くことはできない。
 解法1,解法2で解くためには補助線が必要になる。扇形のまま考えるのではなく,円にして考えたり,2つの二等辺三角形で考えたりすることで,既習内容が使えるようになり解くことができる。このように,多様に考えることができる問題では,時間を多くとり,一つの解法以外に他の解法も考えさせると思考力が高まる。また,グループ学習を取り入れ,お互いの解法を発表し合うことで,表現力の育成にもなる。

           目    次
1  調査の趣旨及び処理   5  テストAの結果とその考察
2  調査結果の概要   6  テストBの結果とその考察
3  分析結果の概要   7  テストTの結果とその考察
4  調査問題の妥当性と信頼性     
 平成21年度高等学校数学標準学力検査の結果とその考察(PDF 408KB)