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4 分析結果の概要

中学校の新学習指導要領は平成20年に,高等学校の新学習指導要領は平成21年に告示された。そして,周知・徹底する期間を経て,中学校数学は平成21年度から,高等学校数学は,平成24年度から先行実施される。今回の改訂により,高校数学では科目構成の変更,指導内容の科目間移動,新たな指導内容の追加など変更点が多々あるので,先行実施を前に今一度確認しておく必要がある。また,高校で教えていた内容の一部が中学校に移行したり,中学校で新しく学習する内容もあるので,中学校での学習内容についても確認し,高校の授業に円滑に入れるようにする必要がある。特に今回は,高校の数学Tから多くの内容が中学校に移行しているので,それを踏まえた上で指導することが重要である。本年度高校に入学した1年生は,現行課程最後の入学生ということになるが,中学校では,移行期間の変わり目の学年にあたり,中学1年生では現行課程の内容を学習し,中学2,3年生では新課程の内容を学習してきている。したがって,本年度の1年生は,表4の3年生の欄で,高校から移行してきた内容を再び高校で学習することになる。

表4   

●…高校から中学に移行,○…中学の学年間で移行
◎…中学で新規に指導,◆…中学から小学校へ移行


(1) 移行内容を踏まえた出題
  そこで,図形分野では,昨年度から相似な図形の面積比・体積比に関する問題を出題し,相似比を利用して面積比と体積比を求める昨年度の生徒と,新しく「相似な図形の面積比と体積比の関係」を学習して解答する本年度の生徒との違いを分析した。その結果,テストで出題した基本的な面積比の問題については,正答率が大幅に上昇したが,テストの面積比・体積比の問題では正答率に違いは見られなかった。相似な図形の面積比と体積比の関係を活用せず,従来の方法で解答している生徒が多いと思われる。

(2) 知識・技能を活用する学習活動の必要性
   「速さ・距離・時間」に関する問題に抵抗を感じている生徒が多くいる。そこで,昨年度,テストの関数分野で出題した,水の注水・排水に関する問題を,本年度は,数値などの条件はそのままで,状況を速さに関する問題に変更して出題し,正答率がどう変わるかを調べた。結果は,正答率が約10%下がり,苦手意識があることが確認できた。また,「速さ・距離・時間」の関係を使って解く応用問題では,「速さ・距離・時間」の関係を,公式として機械的に覚えてはいるが活用できない生徒が多く,正答率が非常に低い結果であった。基礎的・基本的な内容を学習し,知識・技能を身に付けたあと,活用できるレベルまで高める学習活動が必要であることが分かる。

(3) 分数係数の因数分解
例年,テストでは,多項式を共通因数でくくって,たすきがけにより因数分解する問題を出題している。本年度は分数係数の  という問題を出題したところ,正答率が半減し,分数でくるという式変形に慣れていないことが分かった。高校では,分数でくくるという式変形をよく行うので,時間をかけて丁寧に指導する必要がある。


           目    次
1  調査の趣旨及び処理   5  テストの結果とその考察
2  調査結果の概要   6  テストの結果とその考察
3  分析結果の概要   7  テストの結果とその考察
4  調査問題の妥当性と信頼性     
 平成22年度高等学校数学標準学力検査の結果とその考察(PDF 483KB)