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6 テストの結果とその考察

平成23年度高等学校入学者数学学力テスト の問題・正答率・誤答率・主な誤答

(1)分数の処理を定着させたい。

毎年[1](3において因数分解を出題しており,過去数年分の問題と正答率,主な誤答例は上記のとおりである。過去は文字や整数をくくりだし,因数分解する形式を出題しており,約80%から90%という高い正答率が続いていた。しかし,H23をくくり出し,因数分解する形式を出題したところ,正答率は39.1%と激減した。誤答例をみると,18.5%と最も多かった。方程式を解くように,全体に2をかけて,分数を整数にし,因数分解をしていることが分かる。またaをくくり出すのみの誤答も10.2%と多く,例年の1%台と比較しても分かるように,因数分解における分数の処理が苦手であることが考えられる。

今後の指導に向けて
  分数の処理に慣れていない生徒が多いので,方程式や不等式のように,両辺に同じ数や文字をかけたり割ったりすることができる場合と,式の計算や因数分解のように,数や文字を勝手にかけたり割ったりすることができない場合をしっかりと区別できるように指導する必要がある。その際,“勝手に都合のいい”とか“両辺に平等に”などの言葉を補足して説明することにより,生徒の理解を深めることが重要である。この分数の処理については,2次関数における平方完成においても,の係数が分数のとき同様な誤答が出ると思われるので,ここで丁寧に指導しておきたい。
    
(2)2次方程式の解の公式は定着に差がある。
  学習指導要領の改訂により,23入学生は中学校で2次方程式の解の公式を学んでいる。2次方程式の解の公式が定着しているか確認するため,[1](4)において,解の公式を利用する比較的単純な2次方程式を出題したところ,正答率が76.5%となった。多くの生徒が解の公式を使いこなせていることが分かる。しかし,上位群では94.6%の高い正答率に対し,下位群では47.6%の正答率となり,大きな差があることが分かる。また無答率も上位群は0%に対し,下位群は20.8%と高くなっている。
今後の指導に向けて

 位群と下位群に定着度の差があることから,生徒の状況に応じて指導を工夫する必要がある。比較的上位層の生徒を指導する場合は,の解の公式を導き,定着を図りたい。

例 次の2次方程式を解きなさい。
         

  比較的下位層の生徒を指導する場合は,公式の暗記の確認や代入の仕方など,丁寧な指導をし,2次方程式の解の公式を活用できるように指導したい。

例 (1)2次方程式の解の公式 を暗記せよ。

     (2)2次方程式を解け。


(3)具体例を調べながら場合分けを行い,関数を立式する姿勢を身に付けさせたい。
  例年,動点が1つであるのに対し,本年は動点が2つになったことで全体の正答率がわずかに下がった。(1)の具体的なxの値に対するyの値を求める問題では約6割の生徒が正解しているが,(2)の関数を立式する問題になると正答率は23.8%まで大幅に低下する。今回(1)で,(2)の範囲の具体例を調べさせることにより,(2)のヒントとなるようにしたが,結果に現れていない。(1)だけでは動点の動きがイメージできていないといえる。特に下位群については,(1)の段階でつまずいている生徒が多くいるので,生徒の状況に応じて指導を工夫する必要がある。 
 【今後の指導に向けて
  動点の位置によって求める関数が異なるので,どこで場合分けが発生するか具体的なxをとりながら丁寧に指導していく必要がある。特に下位層の生徒には,イメージがつくまで具体的なxをいくつも与えて,関数を自ら導き出せるよう指導し,自信につなげていきたい

(4)相似な図形の面積比・体積比は昨年とほぼ変わらず
 本年度の入学生から「相似な図形の面積比と体積比の関係」を中学校で学習しているので,相似な図形に関する問題を出題し,昨年度の生徒と,本年度の生徒との違いを分析した。(1)の高さを求める問題ではH23の方がH22より若干正答率が上昇したが,(2)の相似比と面積比の関係の問題や(3)の相似比と体積比の問題においては大きな変化はない。A[5]の問題のように,基本的な問題では「相似な図形の面積比と体積比の関係」を利用することができるが,B[4]のような応用問題になると,どのように「相似な図形の面積比と体積比の関係」を活用すればいいか分かっていないようである。
 【今後の指導に向けて
 平面図形や空間図形の問題で相似な図形の相似比を面積比・体積比に活用するには,まずその図形において相似な図形があることを生徒が認識しなければならない。特に空間図形の問題においては,生徒にとって相似な図形の把握が困難であり,指導の際には十分な配慮が必要となる。[4]のような問題では,元の図形と底面と平行に切った図形を別々にかいて比較させることによって,イメージを膨らまさせ,生徒の理解を高めるとよい。
  さらに,相似な空間図形における相似比の面積比・体積比への活用をより定着させるために,同じ形をしたブロックを実際に何個も積み上げて数えさせてみることも,指導の一環として提案したい。

           目    次
1  調査の趣旨及び処理   5  テストの結果とその考察
2  調査結果の概要   6  テストの結果とその考察
3  分析結果の概要   7  テストの結果とその考察
4  調査問題の妥当性と信頼性     
 平成22年度高等学校数学標準学力検査の結果とその考察(PDF 483KB)