愛知県総合教育センター研究紀要 第92集

小学校における英語学習に関する研究

1 はじめに
 中央教育審議会は,「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」の中で,小学校における外国語教育の扱いに関する考え方を示した。そして現在では,多くの小学校が,国際理解教育の一環として総合的な学習の時間の中で英語活動を実施している。一方,若者の間に見られる日本語の「乱れ」などの反省から,早期英語教育の導入には否定的な意見もある。そこで,本研究は,早期英語教育の是非も含めて,小学校での英語活動の在り方について考察することにした。

2 研究の目的
 小学校の総合的な学習の時間で英語活動に取り組む意義と,英語活動を実施する上での留意点について明らかにする。

3 研究の方法
 文献等による理論研究を中心に据え,研究協力校の実践の成果と課題を踏まえた英語活動の在り方を探る。

4 研究の内容
 小学校での英語活動は,早期外国語教育の母語習得に与える影響(言語の相互依存性・共有性),脳の言語中枢の発達と音声言語の習得との関係(言語獲得の感受性期),英語活動を言語学習(Learning)ではなく言語習得(Acquisition)につなげるという観点,中学校での英語学習との連携という観点等から考えると,音声を中心にした活動が望ましいと言える。そして,この活動の際には,本物の英語が提示できることと,楽しく活動させることが必要な条件となる。この条件を満たすためには,AETとのTTの回数が限られている現状では,地域の人材の活用(英語活動支援ボランティアの確保)やAETとの協力による視聴覚教材の作成・活用,市販の視聴覚教材の活用等が有効であると考えられる。

5 研究協力校の実践について
 本研究を進めるに当たって,瀬戸市立道泉小学校,小牧市立小牧原小学校,田原町立野田小学校の3校に研究協力を依頼した。いずれも,学校や地域の特色を生かした英語活動を展開している小学校である。各学校共通に見られることは,児童に,英語活動を楽しみながら,英語による他とのかかわりを体験し,英語によるコミュニケーションへの関心・意欲を高めさせ,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を身に付けさせていくと同時に,外国の文化や言語に対する理解を深めていけるような活動を全校体制で行っていること,それに合わせた現職研修を積極的に行っていることである。

6 おわりに
 小学校での英語活動は音声言語の習得という観点からは喜ばしいことである。しかし,時間的な制約等があり,その成果を性急に期待することは禁物である。英語活動は,英語の学習の場ではなく,英語の習得のための動機付けの機会,あるいは,英語の習得につながる土台づくりととらえていかなければならない。学校は,児童が本物の英語に接する機会をできるだけ多く提供できるよう配慮する必要がある。また,児童の英語や外国の文化に対する関心・意欲の持続と高揚のために,組織的に多様性に富んだ「楽しい」英語活動を研究・開発し,それを全職員の共有財産として整備していくことが重要である。