愛知県総合教育センター研究紀要 第93集

 評価規準,評価方法等の開発に関する研究

はじめに
 平成14年4月より新学習指導要領の全面実施に伴って学習評価が目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)に改められた。
 本研究は,平成13年7月に立ち上げ,これまでに,中学校及び小学校の評価規準,評価方法等の具体例を開発し,各学校に対してその参考例を示すとともに,今年度は「指導と評価の一体化を目指した授業の在り方」に目を向けた実践研究を進めてきた。ここでは,これまでの研究の成果を改めて報告し,皆様の御批評を仰ぎ,16年度の研究につなげていきたい。

1 研究の目的
 新学習指導要領が示す目標に照らしてその実現状況を見る,目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)の実践的な研究を進め,各中学校及び小学校において評価規準,評価方法等の参考となるものを示す。

2 研究の方法
 (1) 中学校3教科(国語,数学,技術・家庭)6名及び小学校9教科9名の計15名の研究協力委員と所員との共同研究で行う。
 (2) 授業実践は,中学校においては,国語,数学及び技術・家庭を,小学校に おいては,9教科を対象として,研究協力委員及び研究協力委員の所属校の協力を得て実施をする。
 (3) センター研究発表会において,発表及び研究協議会を行い,研究成果の還元と情報交換行う。
 (4) 研究成果を受け,評価に関するQ&Aの追加作成を進める。

3 研究の内容
 (1) 授業において評価した児童生徒への指導や支援の在り方について,学習計画における評価規準,評価方法,評価場面,評価した児童生徒への手だてや働き掛けの位置付けなどの,これまでの成果を基に,授業実践による検証を通して,更に研究を深める。
 (2) 評価規準や評価方法等の客観性や信頼性を高めるための考え方や方法につ いて授業実践を通して具体化する。
 (3) これまでの研究において明らかになった様々な問題点や課題を整理し,各学校が抱えている課題にこたえる研究とする。

4 研究の成果と今後の課題
 本年度の各教科の実践を通して概ね次のことがいえる。@学習のまとまりごとにおける評価規準は不可欠であり,また,授業段階での評価規準も児童生徒の学習状況を的確にとらえていくためには極めて重要であることが実証できた。しかし,評価の観点の設定が多すぎたり,評価規準の内容があいまいであったりすると適切な評価はできないことも事実であり,内容や様式を含めて毎日の授業に活用できる評価規準の整理が必要である。A「努力を要する」と評価した児童生徒への効果的な指導や支援を指導過程に位置付けることの価値が認識できた。B授業者のちょっとした声掛けやアドバイスが児童生徒の学習意欲に確実につながること,「関心・意欲・態度」の評価の観点は学習過程を見取るための重要な観点でもあることが確認できた。C「自己評価」や「個人内評価」の重要性が浮彫りになってきた。また,TT指導や少人数指導のような複数教員による指導形態での学習評価の在り方が今後の課題であると考えている。

おわりに
 新しい学習評価が導入されて2年が過ぎようとしている。各学校においては,評価規準の作成が終了し実情に応じて手直しの段階に入っている。また,評価方法については各学校の方針がほぼ確定した段階といえる。重要なことは,こうした評価方法の不断の検証に加えて,評価結果を次の学習指導にいかに生かしていくかである。これは児童生徒の学力の定着・向上の視点からも大きな課題である。そうした課題に少しでも対応できるような手法について今後も当研究を深めていきたいと考えている。