愛知県総合教育センター研究紀要 第93集

 高等学校国語科における評価規準,評価方法等の在り方に関する研究
              −「国語総合」年間学習指導計画の作成及びその指導と評価について−

はじめに
 高等学校新学習指導要領のねらいや内容を受けて示された「指導要録改善通知」は,従前の指導と評価の状況を鑑み,真に目標に準拠した評価を行うことや評価の観点を踏まえて評定することなどを強く求めている。国語科については,目標とする言語能力を育成するために,評価の観点が領域構成に対応した5観点に改められていることを勘案し,指導と評価の改善(一体化)に努めなければならない。

1 研究の目的
 「高等学校教科指導の充実に関する研究(国語)」研究会では,昨年度,喫緊の課題である指導と評価の改善・充実のために,観点別の評価規準,評価方法等を設定した年間学習指導計画を作成した。本年度は,これに沿った実践を試みて,望ましい指導と評価の在り方を追究することを目的とした。

2 研究の方法
 昨年度作成した「高等学校国語科における評価規準,評価方法等の在り方に関する研究(中間報告)」(当センター研究紀要第92集に掲載)の「『国語総合』年間学習指導計画」に従って,研究協力委員が所属する学校で具体的に各領域の単元を抽出・実践し,その単元の指導と評価の計画,指導と評価の実際,実践後の成果と課題をまとめ,指導と評価の在り方を検証した。

3 研究の内容(各実践テーマの紹介)
 【実践1】 言語活動例を踏まえた「話すこと・聞くこと」の領域への対応
 「自尊心を哲学する」―『山月記』を関連教材としたテーマ発表―

 【実践2】 主に「話すこと・聞くこと」の領域の基礎的な事項への対応
 「美しく豊かな表現を目指して」―目的や場に応じた敬語表現の基礎づくり―
 【実践3】 言語活動例を踏まえた「書くこと」の領域への対応
 「文章表現評価表の活用」―相互評価や自己評価を学習活動として生かす指導―
 【実践4】 言語活動例を踏まえた「読むこと」の領域への対応
 「読み比べから探る,作者のねらい」―『今昔物語集』・『羅生門』

4 研究のまとめと今後の課題
 【実践1】は,とかく発表そのものや発表の際の態度を中心に評価しがちな点に留意し,発表に至るまでの過程なども評価することによって,評価の一在り方と生徒の学習の深まりとを確かめることができた。ただ,各学校の生徒の状況によっては,意図的・段階的に「聞くこと」を中心とした指導と評価を行う必要がある。
 【実践2】は,「話すこと・聞くこと」の指導を現代文分野に限定せず,古典分野に配当し,指導及びその評価をする場合の一提案ができたと考えている。
 【実践3】は,年間の指導を見据えた「文章表現評価表」を利用することによって,教員の指導,生徒の学習内容のとらえが明確になり,所期の目的を達成することができたと言える。ただ,評価表の評価項目等については,改善の余地がある。
 【実践4】は,ねらいを定め,学習内容を絞り込んだ読み比べの指導(配当時間も従来の半分程度)が,教材のもつ力と相まって,生徒の学習意欲を喚起したことが分かった。指導と評価の在り方を大胆に変えた取組には「不安」も残るが,指導をスパイラルに推し進めていく中で,この「不安」は解消できると考えられる。

おわりに
 いずれの実践も,実践条件が必ずしも十分に整っているとは言い難い中で,生徒の実態を考慮しつつ行ったものであり,工夫・改善の余地は随所にあると思われる。しかし,この指導と評価の一体化を強く意識した取組によって,国語の授業が変わり,生徒へのアプローチが深まったことは確かである。各学校国語科においても,評価規準,評価方法等を盛り込んだ年間学習指導計画を作成し,この計画に従って指導と評価の工夫・改善を図る具体的な実践の積み上げを期待したい。