愛知県総合教育センター研究紀要 第93集

コンデンサーを用いた課題研究の事例
     −ジェネレータでの充放電による電気容量の測定−

はじめに
 今年度から学年進行で実施される高等学校新学習指導要領では,物理学的に探究する能力と態度を育て創造的な思考力を高めるために,物理Uにおいて課題研究が従前にもまして重要視されている。平成11年12月発行の学習指導要領解説理科編には,いくつかの課題研究例があげられているが,どのような課題を取り上げるかは,生徒の特性や学校の施設・設備等に配慮して,それぞれの学校で決めることになっている。ここでは,その選択肢の一つとしてジェネレータ(手動式発電機)を用いて,コンデンサーを充放電することによって,その電気容量を求める事例に取り組む。

1 研究の目的
 モーターと低速ギアの組合せであるジェネレータ(手動式発電機)を充電したコンデンサーで回転させてみると,回転数とコンデンサーのエネルギーに比例する値である充電電圧の2乗とが,ほぼ比例関係にあることが分かる。このことを利用し,課題研究のテーマとしてコンデンサーの電気容量や蓄えられるエネルギーを求めることを研究する。

2 研究の方法
 充電したコンデンサーをジェネレータにつなぎ放電させることで,ハンドルを回転させる。電圧が5.0[V]になった瞬間にストップウォッチをスタートさせ,電圧が4.0,3.0,2.0,1.0[V] になる時のスプリットタイムを測定する。また,一定電流値での放電時間を,V−tグラフとt軸との交点より求める。これらの結果から,コンデンサーの蓄えた電気量を計算し,充電電圧で割ることで電気容量を求める。

3 研究の内容
 (1) 準備するもの
 (2) ジェネレータハンドル1回転の仕事量
 (3) コンデンサーの仕事によるジェネレータの回転数
 (4) コンデンサーの電気容量

4 研究のまとめと今後の課題
 ジェネレータハンドル1回転の仕事量は,ほぼ一定と見なしてよいことがはっきりした。ただし,電源電圧を1[V]付近まで下げると,回転が非常に緩やかとなり,角速度にふらつきが見られるようになる。1回転の仕事量も1[J]ほどに跳ね上がる。逆に7[V]を越える電源電圧では,大きな騒音とともに激しく回転しする。
 したがって,コンデンサーの仕事によるジェネレータの回転数の実験では,コンデンサーの充電電圧を2〜6[V]とし,コンデンサーの仕事を求めた。この結果,理論通りジェネレータの回転数(コンデンサーの蓄えたエネルギー)がV2 に比例して,コンデンサーの仕事/充電電圧の2乗の値がほぼ一定となった。
 また,コンデンサーの放電時におけるV−tグラフより放電時間を求めることによって,コンデンサーの電気容量を求める実験では,コンデンサーの規格 1.0[F] に対して,0.98[F]や0.90[F]と良好なものとなった。
 今後の課題として,課題研究の追究テーマとなる幾つかの項目をあげた。

おわりに
 課題研究では,幾つかのテーマを用意し,生徒が興味関心をもてる研究の選択ができるよう概要説明(研究の方向性をある程度含む)を行うことが必要である。研究に用いる授業時数を設定し,各テーマ(班)ごとに研究計画を立てさせる。後は,各研究に対して適宜,援助・助言を行うことに徹する。生徒自らが問題を発見し,自ら解決する過程で様々な思考・判断を繰り返す。時間はかかるが,そのこと自体が科学的に探究する方法や問題解決の能力を身に付けさせることに通じる。この研究が課題研究のテーマの一つとして役立てば幸いである。