愛知県総合教育センター研究紀要 第94集

  評価規準,評価方法等の開発に関する研究

はじめに
 平成14年4月より小・中学校では新学習指導要領の全面実施に伴って学習評価が目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)に改められた。
 本研究は,平成13年7月に立上げ,これまでに,中学校及び小学校の評価規準,評価方法等の具体例を開発し,各学校に対してその参考例を示すとともに,「指導と評価の一体化を目指した授業の在り方」に目を向けた実践的研究を進めてきた。ここでは,これまでの研究の成果も含めて報告する。

1 研究の目的
新学習指導要領が示す目標に照らしてその実現状況を見る,目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)の実践的な研究を進め,各中学校及び小学校において評価規準,評価方法等の参考となるものを示す。
平成16年度は,研究の最終年度として,指導形態の多様化が進んでいる小学校に的を絞り,「学習指導の改善に向けた小学校の取組」を通して学習評価の在り方を追究することにした。

2 研究の方法
 (1) 小学校4名の研究協力委員と所員との共同研究で行う。
 (2) 小学校全教科を研究の対象とし,研究協力委員及び研究協力委員の所属校の協力を得て授業実践を行う。
 (3) 低学年,中学年,高学年それぞれの段階を考慮した授業実践を行う。
 (4) 学習の指導形態に応じた学習評価の在り方を探る実践的研究を進める。

3 研究の内容
 (1) 評価結果を受けての学習指導や支援の改善の在り方について,評価規準や評価方法,児童への手だてや働き掛け等,今までの研究内容を基に,授業実践を通して更に研究を深める。
 (2) 様々な指導形態で授業を進めている小学校の現状に応じた評価方法の工夫改善の在り方に目を向け,視点を絞った研究を進める。
 (3) 学習評価の客観性や信頼性を高める考え方や方法について,授業実践を通して具体化する。

4 研究の成果と課題
 @評価規準や評価計画のシンプル化,Aより的確な評価,より的確な対応,B評価結果や評価内容の学習指導への生かし方,C自己評価や相互評価,個人内評価の授業への生かし方,D補充的,発展的な学習,以上5つの視点で実践を進めた。
 その結果,例えば「シンプル化は,評価規準や評価計画を見直すことにもなり,学習のねらいや内容を明確に認識することになった」「具体的で的確な評価や支援のためには,学習目標の設定と評価の観点の絞り込みは必要(ただし,見落としや軽視につながらないように配慮する)である」「児童の学習効果を高めるためには前時までの評価結果や評価内容を生かした学習指導を計画し,実施することが大切である」「自己評価は児童自身が自分の成長の跡としてとらえることができ,同時に『関心・意欲・態度』を評価するひとつの要素にもなりうる」「発展的な学習については,学習場面に適した課題や指導方法,タイミングを考えなければならないが,それまでの学習評価の在り方が重要になってくる」などのことが明らかになった。

おわりに
 本研究は,「評価規準,評価方法の開発」に始まり,「モデル案の例示」「説明会の開催」「実態調査の実施」「評価に関する講座や研修の実施」「授業を通しての実践研究」と,理論構築から実践検証への流れで研究を進めてきた。そして,その過程においては県内のみならず広く全国にその成果を発信してきた。本年度で本研究は終えるが,@研究内容はエンドレスであること,A学校のニーズが多様であること,B全国的に見てもまだ方向性が定まっていないこと,C保護者や世論の関心が相変わらず高いこと,などを考えると今後も関連の研究を推進していく必要がある。