愛知県総合教育センター研究紀要 第94集

 少子化に対応した家庭科教育の在り方に関する研究
      −人とかかわりながら,主体的に生きる生徒の育成を目指して−

はじめに
 少子化に対応するために提言された様々な方策の中には,家庭科教育に言及しているものもある。また,家庭科の学習指導要領は,男女共同参画社会の推進や少子高齢化への対応などを改善の基本方針として改訂された。家庭科を取り巻くこれらの現状を見据え,これからの家庭科教育の在り方を追究していく必要がある。

1 研究の目的
 少子化社会を生きる児童生徒に対して,教科「家庭」が担うべき役割を明確にした上で,主体的に生きる児童生徒の育成を目指した小・中・高等学校における家庭科の学習の在り方について提案する。

2 研究の方法
 (1) 少子化に対応するための方策に関する資料を収集し,家庭科教育とのかかわりについて検討し,家庭科教育の役割を整理する。
 (2) 児童生徒の実態を把握し,小・中・高等学校の学習指導要領を基に家庭科教育の在り方について構想を立てる。
 (3) 構想に基づき授業計画を立て実践し,理論・手だての有効性を検証する。

3 研究の内容
 (1) 社会問題としての少子化の現状
 戦後の合計特殊出生率の推移から少子化の進行の実態を把握し,その原因と背景及び少子化のもたらす影響を考察した。
 (2) 少子化への対応
 少子化の進行に伴って提言された様々な方策や少子化と教育に関する中央教育審議会の報告,家庭科の学習指導要領を検討し,家庭科が担うべき役割を整理した。
 (3) 児童生徒の実態把握
 児童生徒の家庭科への興味・関心や,家族及び乳幼児とのかかわりについて実態を把握するためアンケート調査を行った。
 (4) 研究構想
 研究の内容(1)から(3)の基礎研究を基に,家庭科教育の在り方について構想をまとめた。
 (5) 実践
   構想に基づき各校で次のようなテーマを設定し,実践した。
 【小学校での実践】家族への思いを高め,生活に生かす学習
 【中学校での実践】幼児との触れ合いを通して,自分を見つめ,家族・地域への思いを深める学習
 【高等学校普通科での実践】子育ての意義を理解し,自らの生き方を考える学習
 【高等学校専門学科での実践】人生指針の発見を目指す保育学習
    
4 研究のまとめと今後の課題
 少子化社会の中で,家庭科教育としてどのような力,資質を育てるべきかを考察し,授業実践例を通して具体的に提案した。各校での指導計画の工夫や体験学習は,家庭生活への関心を高め,家族理解・幼児理解から自己理解,更には将来の夢にもつながり,児童生徒の人間的成長を促した。
 今後,児童生徒一人一人を的確に把握し,適切な支援をしたり,授業改善につなげたりするため,評価規準を作成することは必要不可欠な課題である。

おわりに
 主体的に人とかかわり,その体験の中で自分を見つめながら学ぼうとする力は,児童生徒が将来家庭や社会を創造していく上で欠かせない力であり,それを育成することは家庭科教育の大切な役割である。小学校から高等学校までの限られた時間の中で,家庭科の学習をより効果のあるものにするためには,地域の小・中・高等学校が密接に情報交換をし,連携しながら学習活動を展開していくことが必要である。今回の研究が,そうした意味でも参考になれば幸いである。