愛知県総合教育センター研究紀要 第95集

 特別支援教育相談のネットワーク構築に関する研究
−障害のある子供とその保護者のニーズに応じた相談支援を
充実するための養護学校と小中学校等,関係機関との連携−

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はじめに

 特別支援教育相談では,障害のある子供のニーズに対して,教育,医療,福祉等の関係機関との連携,協力に十分配慮することが必要である。そこで,本研究では,地域の特別支援教育のセンター的機能を担う養護学校の教育相談支援体制の整備,充実及び養護学校,小中学校を中心とした関係機関との相談ネットワーク構築について検討した。

1 研究の目的

(1)  養護学校が障害のある子供やその保護者のニーズに応じた教育相談を展開できるように,地域や学校の特性を踏まえた校内相談支援体制を具体化する。
(2)  養護学校と地域の小中学校及び教育,福祉,医療,労働等の関係機関との教育相談ネットワークを構築する方法を具体化する。

2 研究の方法

 県内3校の知的障害養護学校とその地域の小中学校3校の研究協力を得て,各校の状況や地域の特性に応じた特別支援教育相談や地域支援活動にかかわる連携推進計画を立案し,実践及び評価を行う。

3 研究の内容

 平成16年度は,養護学校3校において研究を進めた。
 当該年度に地域支援部が校務分掌に位置付けられた豊川養護学校については,@地域での相談ニーズの把握,A校内体制の整備等を行った。
 すでに地域支援部が位置付けられていた半田,安城養護学校については,@教育相談以外の地域支援活動の推進,A関係機関との連携推進等,前年度までの実践の継続,充実を図った。
 平成17年度は,養護学校に加え,地域の小中学校に研究協力を依頼し,養護学校と小中学校との連携,協力について,具体的内容,指導方法の実践研究を進めた。実践の手順は,@連携モデル案の提示,A地域ごとの学校における連携計画の協議,立案,B連携計画に基づく実践と評価である。このほかに養護学校では,協力校以外の関係機関との連携,協力を推進するために,広報の充実やネットワーク構築を進めた。

4 研究のまとめと今後の課題 

(1)  成果
 養護学校では,地域支援部の上位組織として地域支援委員会を設置し,校内の各分掌間の連携をより充実させた学校が多かった。また,福祉機関と連携した訪問相談,小中学校等への巡回相談,特別支援教育にかかわる研修会,小中学校や関係機関に対する情報提供等,地域のニーズに即した多様な相談支援活動が展開されるようになった。そして,これらの相談支援活動が契機となり,養護学校,小中学校,福祉施設,市町村教育委員会,医療機関等の様々な関係機関とのネットワーク構築が進展した。その結果,小中学校では,養護学校の支援により,特別な教育的支援を必要とする児童生徒に対する教員間の共通理解が進み,学校全体として対象児童生徒に対する支援の内容,方法が検討され,日々の教育的対応に生かされるようになった。
(2)  課題
 今後の課題は,@各学校の特別支援教育コーディネーターを中心として,関係機関等との連携を更に強化,拡大していくこと,A支援対象児の個人情報の保護に関する共通理解を推進すること,B関係機関が専門性を生かしながら支援について共同歩調をとることができるよう,役割分担を明確にすること,C養護学校の小中学校支援を一層充実させること,D各地域の核となる小中学校の近隣小中学校への支援機能を充実させ,地域のニーズに更にこたえていくことである。